最新記事

環境問題

マクドナルドの紙製ストローはリサイクルできず廃棄されていた

McDonald's Paper Straws Can't Be Recycled and Must Be Thrown Away

2019年8月6日(火)17時27分
ブレンダン・コール

欧米人にとってストローは環境面からも嗜好面からも大問題だ Yves Herman-REUTERS

<内部資料から明るみに出た大失態。本当に環境のことを思っていたのではなく、グリーンウォッシュ(見せかけだけの環境配慮)だったのではないかと企業イメージダウン>

マクドナルドが「環境への配慮」から鳴り物入りで導入した紙製ストローは、なんとリサイクルできないものだった。

マクドナルドは2018年、イギリスとアイルランドで展開する1361店舗すべてでプラスチック製ストローの使用をやめ、紙製ストローに切り替えた。

当時マクドナルドの店では、1日に180万本のプラスチック製ストローが使われていた。紙製ストローが導入されたときには、紙製は「100%リサイクル可能」と謳われていた。だが英紙サンが入手した内部メモには、紙製ストローは厚過ぎてリサイクル困難、と書かれていたのだ。

消費者の評判も当初から散々だった。紙製ストローでは飲み物が不味くなり、ミルクシェイクが飲みにくいうえ、時間が経つと水分を吸って溶けてしまうなど苦情が殺到。以前のプラスチック製ストロー(リサイクルされていた)の再導入を求める署名運動も行われており、これまでに5万人以上が署名している。

ストローがもらえず激高した客とマクドナルド従業員の殴り合い


「紙製ストローを導入したとき、マクドナルドは環境への責任を果たしていると称賛を受けた」と、マクドナルドの関係者は同紙に語った。「だがそれは、環境保護団体に取り入るためのパフォーマンスに過ぎなかったようだ。なぜなら、紙製ストローはそのままゴミ箱行きになっているからだ。ばかげている」

紙製ストロー嫌いの消費者を代表し、マクドナルド店内でプラスチック・ストローの店を開くグラスゴーのユーチューバー


マクドナルドは声明で次のように述べた。「私たちは紙製ストローの強度を高めた。そのために、素材自体はリサイクル可能でも、ストローは分厚過ぎてリサイクルができなくなってしまった」

マクドナルドは批判にさらされている。

英紙デイリー・テレグラフによると、元エネルギー・気候変動大臣のエド・デイビーはこう言った。「プラスチック製ストローの代替品を見つけるのはそれほど難しくはなかったはずだ。これではグリーンウォッシュ(あたかも環境に配慮しているようにみせかける行為)と言われても仕方がない。そうでなければ、とてつもない大失態だ」

また環境団体フレンズ・オブ・ジ・アース(FoE)のジュリアン・カービーはこう話す。「ストローを一切使わずゴミも出さない飲み方もある。昔ながらに、コップに口をつけて飲む方法だ」

(翻訳:ガリレオ)

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ

ワールド

スーダン、人道危機リストで3年連続ワースト1位 内

ワールド

スマトラ島洪水、活動正常化には数カ月=プラボウォ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中