最新記事

韓国事情

官民あげて日本就職に取り組む韓国の最新事情 

2018年10月30日(火)16時50分
佐々木和義

また、韓国南東部の慶尚南道も独自の制度を発足させている。道内の大学を卒業し、IT、観光、貿易流通業分野のいずれかの資格を持つ道内居住者が対象で、書類選考と面接を通して語学学校の学費などを支援する計画だ。日本IT就職課程を新設した民間の専門学校もある。

海外就職を求める若者が、韓国産業人材公団が指定する海外就職斡旋機関を利用すると、斡旋企業に200万ウォンの手数料が支払われ、富裕層ではない若者が海外で就労する際には400万ウォンから800万ウォンの支援金が支給される。支援金は日本に限らないが、日本への渡航と転居に十分な額である。

官民あげて日本就職に取り組む韓国だが、人材流出の懸念もある。一度、海外に出た韓国人は母国に戻らない傾向があるのだ。かつて、サムスンが将来を担う人材を育成する目的で選抜した社員を米国等に留学させたが、MBA取得と同時に現地で転職し、サムスンには戻らない若者が続出した。

日本で採用した韓国人を駐在員として韓国に派遣する企業が目立つようになったが、韓国駐在を嫌って日本で転職先を探した例もある。

日本企業の不安は転職率

いっぽう韓国人を採用する日本企業がもつ不安に転職率の高さがある。せっかく育てた人材が早期に転職すると企業にとっては損失であり、面接のときに、何年会社で働く考えがあるかを質問するケースは少なくない。

在韓日系企業でたびたび話題になるテーマに「将来ビジョン」がある。日本企業は会社のビジョンを語りがちだが、会社への忠誠心が希薄な韓国人は自身のビジョンを求めている。社員としての将来ビジョンは、韓国人の若者が会社に定着する一つの重要な要素である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの

ビジネス

クーグラー元FRB理事、辞任前に倫理規定に抵触する
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中