最新記事

銀行

人気の英国ネット銀行、顧客データへの企業の接続手数料で収益追求

2017年12月26日(火)14時01分

12月21日、英国でデジタルアプリケーションを通じてサービスを提供するモンゾ・バンクなどのネット銀行各行は、顧客への融資よりも他の企業に顧客へのアクセスを認めることで利益を稼ぎ出す手法を追求している。写真はモンゾのカード。モンゾ提供写真(2017年 ロイター)

英国でデジタルアプリケーションを通じてサービスを提供するモンゾ・バンクなどのネット銀行各行は、顧客への融資よりも他の企業に顧客へのアクセスを認めることで利益を稼ぎ出す手法を追求している。だが、そうした手法で利益を確保できるかは、まだ検証されていない。

モンゾの利用者数は今年の9カ月間で300%急増して45万人となった。これが投資家を引き寄せ、企業価値は2倍余り上昇して3億3600万ドルと評価されている。

こうした成長はコストを伴う。モンゾは海外での現金引き出し手数料を無料としていることもあり、最近まで顧客1人当たりの損益が50ポンド(67ドル)の赤字となっていた。

モンゾのトム・ブロムフィールド最高経営責任者(CEO)はロイターに「成長するほど損失が拡大する。ある時点で転換する必要がある」と述べ、顧客1人当たりの損益を黒字転換する意向を示したが、具体的な収益目標には言及しなかった。

モンゾやスターリング・バンクなどのネット銀行は大方、従来型銀行の収益源である融資は手掛けておらず、オーバードラフトや外国為替取引に対する高い手数料も課していない。

新興勢力の銀行にとって、こうしたコストを吸収するのは容易ではない。だがネット銀行勢は、顧客データを活用して他の金融サービスに展開を広げるという新たなビジネスモデルから利益を稼ぎ出せると考えている。

新たな規制により大手銀行の支配力が低下するとともに、規制の強化と競争の激化で利益が分散化する中、こうした手法が成功すれば、ネット銀行が大手銀行のリテール事業の利益を侵食することができる。

市場

デジタルでサービスを提供する銀行は、リアルタイムの支出分析や資金の利用状況に関する通知の送信に加え、1回のクリックでカードの利用を凍結したり凍結を解除できる仕組みなど、使いやすいアプリを売りにしている。

だがネット銀行にとって、顧客の生活の中心になれるかどうかが、適切な商品を案内するのに必要なデータにアクセスするための鍵となる。

スターリング・バンクのアン・ボーデンCEOは「人々の金融面の営みで重要なのは、どこにデータがあるかだ」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、緩和的金融政策を維持へ 経済リスクに対

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 北西部の軍学

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中