最新記事

中東

早わかりサウジ情勢 若きムハンマド皇太子が権力掌握、脱石油目指す

2017年11月11日(土)18時32分

11月8日、サウジアラビアは、この3年でサルマン国王からムハンマド皇太子(写真)への権限移譲が進み、野心に燃える若き皇太子が経済改革から隣国イエメンとの紛争まであらゆる課題で主体的な役割を担っている。リヤドで10月撮影(2017年 ロイター/Hamad I Mohammed)

サウジアラビアは、過去3年間にサルマン国王からムハンマド皇太子への権限移譲が進み、野心に燃える若き皇太子が経済改革から隣国イエメンとの紛争まであらゆる課題で主体的な役割を担っている。

サウジ情勢で押さえておくべきポイントは以下の通り。

王室の内紛

ムハンマド皇太子は6月、サルマン国王のおいのムハンマド・ビン・ナエフ氏に代わり皇太子の座に就いた。国王に近い筋によると、ナエフ氏は過去に受けた襲撃で体内に破片が残り、その影響でモルヒネやコカインの中毒に陥っており、「皇太子廃嫡は国家の利益に適う」という。

ロイターはナエフ氏の薬物中毒を独自には確認できなかった。

汚職取り締まり

皇太子は先週末に汚職の取り締まりに乗り出し、11人の王子や現職閣僚らを拘束した。

サウジ国民の多くは、権力者の間にはびこる公金横領に鉄槌を下したと、今回の取り締まりを歓迎しており、トランプ米大統領も支持を表明した。ただ、西側当局者の間からは、部族内や王室内から反発が起きるのではないかと懸念する声も聞かれる。

イエメン問題

皇太子は2015年3月に隣国イエメンに対する軍事攻撃を開始した。サウジ率いる連合軍は、イランとつながりのあるイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」を標的としており、これまでの軍事攻撃で1万人以上が死亡している。

アラビア半島の最貧国であるイエメンは、数百万人が飢えやコレラ感染に見舞われている。

対カタール関係

皇太子は、テロリストを支援し、イラン寄りだとカタールを批判し、同国の孤立化政策を主導している。

一方のカタールはこうした非難を退け、サウジの独裁的な支配層から距離を置いていることがサウジの不興を買ったと主張している。

対イラン関係

サウジとイランは以前から中東地域の盟主の座を争ってきたが、サルマン国王とムハンマド皇太子が対イランのイスラム教スンニ派連合を形成する取り組みを進めたことで関係が一段と悪化した。

皇太子は7日、イランがイエメンの「フーシ派」にミサイルを供給しており、これはサウジに対する「直接的な軍事的侵略」に当たるとの考えを示した。

さらに皇太子は、イランの影響下にあるレバノンのシーア派組織ヒズボラを威嚇し、レバノンでもイランとの争いを繰り広げている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中