最新記事

日本社会

日本の大卒女性の正社員率は、母親世代では中東レベルの低さ

2017年11月1日(水)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本の大卒女性の就業率は国際的にみても低い。OECD(経済協力開発機構)の国際学力調査「PISA2012」では、15歳の生徒に母親の就業状態を尋ねている。大学・大学院卒の母親に限ると、フルタイム就業が40.7%、パートタイム就業が35.3%、求職中が2.3%、専業主婦が21.7%、という分布だ(日本)。これに対してスウェーデンでは、フルタイム就業が75.6%と多くを占める。

横軸にパートタイム就業・専業主婦、縦軸にフルタイム就業の率をとった座標上に、調査対象の65カ国を配置すると<図2>のようになる。「瑞」はスウェーデンをさす。

maita171101-chart02.jpg

2つの指標はほぼ表裏なので、「斜め」の配置になる。左上は高学歴女性の社会進出が進んだ国で、ポーランドやスロベニアなど旧共産圏の国が多い。国民皆労働の伝統が強いためだろう。

日本は右下にあり、宗教的な理由で女性の社会進出が制限されている中東諸国と同レベルだ。日本と同じように少子化が社会問題となっているドイツがこの近辺に位置しているのも興味深い(ただしドイツはパート就業が多く、専業主婦は少ない)。

斜線は均等線で、このラインより上にあるのはパート・主婦よりフルタイム就業の率が高い国だが、数としてはこちらが大半を占める(53カ国)。日本は国際標準から大きく外れている。

日本では、高学歴女性の才能が活用されていない。労働生産性の低さは、このこととも関連しているのではないか。女性の社会進出を促すためには、男性の「家庭進出」の促進や保育所の増設が必要になる。フレックスタイム制やICT(情報通信技術)を活用したテレワークなど、柔軟な働き方を広めることも有効だ。人手不足の時代にあって、人口の半分を占める女性の労働参画が制約される現状は変えなければならない。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2012年)
    OECD「PISA 2012」

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中