最新記事

米軍

ニジェールでの米兵襲撃は「トランプのベンガジ」に?

2017年10月27日(金)16時30分
ジョン・ハルティワンガー

ニジェール軍兵士にテロリストの身柄確保のやり方を指南する米兵 Joe Penney-REUTERS

<遺族への無神経な発言に批判が集中。対応の遅れと曖昧な説明に不信が高まる>

「この事件は『トランプのベンガジ』になるかもしれない」

10月4日に西アフリカのニジェールで米特殊部隊の兵士が武装勢力に襲撃された事件について、民主党のフレデリカ・ウィルソン下院議員はメディアにそう語った。

犠牲となった米兵の遺体の引き取りに向かう遺族にトランプ米大統領が電話をしたとき、遺族に付き添いリムジンに同乗していたウィルソンはその無神経な言葉に激しい怒りを覚えたという。死亡した兵士の妻に「彼は軍に入った以上、覚悟していたはずだ」と言ったというのだ。

事件が起きたのはマリとの国境地帯。地元有力者らとの会合を終えた米兵の少なくとも8人が非装甲の小型トラックで移動中、待ち伏せしていた武装勢力に襲撃された。武装勢力は総勢50人ほどで、テロ組織ISIS(自称イスラム国)の関連組織とみられる。現場では約30分間銃撃戦が続いたが、フランス軍がヘリコプターで支援に向かい生存者を救出したという。

トランプ政権は当初、死者は3人と報告したが、そのほかに戦闘中に行方不明になった兵士が1人いて、約48時間後に遺体で発見された。この兵士が行方不明になった経緯や殺害された状況は明らかにされていない。米軍が50人規模の襲撃計画を事前に察知できなかったことなど、この事件については多くの疑問があるが、トランプ政権は「調査中」の一点張りだ。

共和党のジョン・マケイン上院議員は18日、トランプ政権は事実を率直に伝えていないとして、議会が調査に乗り出す可能性を示唆した。

渦巻く不信はオバマ前政権時代のベンガジ事件を彷彿させる。

クリントン元国務長官の側近でリベラル系シンクタンク、アメリカ進歩センターのニーラ・タンデンは、「ベンガジ事件では議会で何度も公聴会が開かれた。ニジェールでの米兵の死については1回もないのはなぜか」とツイート。ニュース専門局MSNBCのジョイ・リード記者も「ベンガジ事件はあんなに騒がれたのに、ニジェール事件についてはなぜ誰も何も言わないのか」と問い掛けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中