最新記事

日本外交

対北朝鮮「圧力一辺倒」は日本だけ?

2017年10月10日(火)17時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そのため、現時点でもなお、休戦協定に違反した朝鮮戦争国連軍の施設が、以下の在日米軍基地に設置して機能しているようだ。

    ●キャンプ座間 ●横須賀海軍施設 ●佐世保海軍施設
    ●横田飛行場 ●嘉手納飛行場 ●普天間飛行場
など。

このように、アメリカが休戦協定を違反し続け、それを支援し続けてきた日本の実態を覆い隠しながら、北朝鮮問題の真の解決などあり得るのだろうか?

いまや北朝鮮が「正常な精神と判断力を持っているとは思いがたい指導者」の下で動いている現状において、日本国民の安全を守るために「100%、トランプとともにいる」を主張し続けているだけでいいのだろうか?日本が安全でいられる「軍事的外科手術」があるのなら大変結構だが......。国連安保理で北朝鮮制裁決議が一致して採決されたと言っても、一致できる点まで中露に譲歩させた結果に過ぎない。

実はアメリカ自身は休戦協定の冒頭に書いてある「平和条約」実現に向かわざるを得ない現実を自覚しており、カーター元大統領が北朝鮮を電撃訪問したい意向を表明し「米国政府は北朝鮮に平和協定締結に向けた高位級代表団を送らなければならない」と強調しているとのこと。

なぜミサイル発射の可能性の高い期間を選んで解散したのか?

なお、北朝鮮は本日10日の朝鮮労働党の創建記念日前後、あるいは10月18日の中国共産党の第19回党大会開幕の前後に合わせてミサイルを発射する可能性が高いことが早くから予測されている。なぜ安倍首相はわざわざこの期間を狙って解散総選挙に打って出たのだろうか?

選挙期間中にミサイル発射でもあれば、選挙に有利に働くという要素は否めないだろう。

「偶然の一致だ」と弁明すれば、あまりに国際情勢を知らな過ぎると非難されるにちがいない。

そもそも北朝鮮への抗議声明に関しては、前の国会で全員一致で賛同している。そこには争点はなかったはずだ。わざわざ解散して国民に問うまでもなく、あらゆる方法で北朝鮮の暴走を止めなければならない。このことにおいて日本の全国民は一致しているはずだ。

北朝鮮の暴走が爆発する期間と総選挙期間を一致させた理由に関して、安倍首相は「民主主義が北朝鮮によって影響を受けてはならないから」(大意)と回答しているようだが、問いと回答の間の整合性がない。わざわざこの期間を選んで選挙を行なわなくとも、日本の民主主義が北朝鮮の暴挙によって影響を受けることなど絶対にあり得ないからである。

もっと正直に、朝鮮戦争休戦協定を米韓が違反し日本もその違反を支援しているが、金正恩政権により事態が「正常ではなくなったので」、日本は然るべき新たな「(攻守)体制」を模索する必要に迫られていると言ってしまった方が納得がいく。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中