最新記事

自動車

ドイツ車の信頼が大きく地に落ちた理由

2017年8月28日(月)11時18分
バーナード・リーガー

フォルクスワーゲン・ゴルフの生産ライン Fabian Bimmer-REUTERS

<ドイツの大手自動車メーカー5社の不正となれ合いが発覚。国家の誇りとも言える産業を傷つけている>

このところドイツは国際的な影響力を高めているが、その究極の基盤は国の経済力だ。もっと具体的に言えば、ドイツの自動車会社の強さだ。

ドイツの失業率は10年の7%から4.1%にまで低下した。その大部分は、ダイムラー、BMW、そしてアウディとポルシェを傘下に収めるフォルクスワーゲン(VW)の記録的な業績のおかげだ。

ドイツの戦後のアイデンティティーは、主に大手自動車会社によってつくられた。「ドイツ製」というラベルは、卓越した品質を象徴してきた。しかし今、自動車業界の技術と倫理の信頼性、そしてその延長にあるドイツ経済全体の堅実性が疑問視されている。国内外の消費者は、ドイツ製品の信頼性を疑っている。ドイツにとっては、アイデンティティーに関わる問題だ。

15年9月、VWの車1150万台がディーゼルエンジンの排ガス規制を不正に擦り抜けたことが発覚し、津波のような不安を呼び起こした。

VWはアメリカで、この違法行為に対する高い代償を支払っている。裁判所の和解金と罰金は210億ドルを超えた。しかしVWのスキャンダルは、氷山の一角でしかないことが分かった。

【参考記事】「ディーゼル神話」崩壊、ドイツがEVへ急転換、一方トヨタは...

7月22日、ドイツの週刊誌シュピーゲルは、VW、BMW、ダイムラー、アウディ、ポルシェがドイツの産業史上最大級のカルテルを90年代から結んでいたと報じた。

この大手5社は06年以降、情報を交換し、部品供給業者に圧力をかけ、主要コンポーネントの技術仕様を擦り合わせていた。ディーゼル排ガス規制のごまかしでも協力関係にあったようだ。

ドイツの自動車メーカーは温室効果ガス排出規制の厳格化に対応して、温室効果ガスの排出が少ないディーゼル技術の開発を進めた。同時に発生する有害な窒素酸化物は、十分な大きさの尿素タンクを装備すれば排気から除去できる。だがコストとスペースを節約するため、大手5社は容量が小さくて排気量を基準内に抑えられないタンクを多くのモデルに採用することに合意していた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン

ワールド

米はウクライナに「譲歩求めすぎ」、ゼレンスキー氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    反ワクチン政策が人命を奪い始めた
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中