最新記事

中国

安倍首相、一帯一路協力表明--中国、高笑い

2017年6月7日(水)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

5月末、中国の楊潔チ国務委員が来日したときの 安倍首相 Issei Kato-REUTERS

安倍首相は5日、場合によっては一帯一路に協力する旨の発言をした。中国外交部は行動で示せと言い、ネットは歴史問題を謝罪してからにしろ、遂に中国の天下だと勝ち誇っている。いかなる反応があるのか見てみよう。

安倍首相が都内の会議で講演

安倍首相は5日、東京都内で開催された国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の夕食会で講演し、中国の巨大経済圏「一帯一路」構想に関して、条件が揃えば日本も協力していきたいと述べた。その詳細は首相官邸ホームページの「記者会見」にある。

たとえば、「国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」など、「万人が利用でき、透明で公正な調達によるインフラ整備であること」「借り入れ国が債務を返済可能で、財政の健全性が損なわれない」と条件を示したが、安倍首相が自らの言葉で協力の意思を明らかにしたのは初めて。

今年が日中国交正常化45周年であり、また日中首脳会談を行いたいという安倍首相の政治的判断ではあろうが、あまりに多くの危険を伴う。

中国がどう受け止めているのか、政府と庶民の声を拾ってみよう。

中国外交部の反応

中国外交部の華春瑩(かしゅんいん)報道官は6日、定例記者会見で「一帯一路構想は、中日両国が互恵協力、共同発展を実現する新たなプラットフォームと"試験田"となることができる。日本側が一帯一路の枠組みの中で中国側との協力を模索することを歓迎する」とした上で、「日本側が(一帯一路に加盟したいと)希望するなら、その希望を、両国関係を改善することで表現し、あるいは(加盟したいという)願望を、真の政策と行動で示すことを希望する」と述べた。

「試験田」というのは、1958年の大躍進の時代に、農村の高級幹部が下部組織に入って農業生産を試験した時の実験田のこと。もしただ単に「テストケース」と言いたいのなら、こういう場合、一般的には「試点」という中国語を用いる。しかし華報道官は「試点」という言葉を使わず、わざわざ「試験田」という言葉を用いた。

ここにはすでに、中国と日本が対等ではないことを示唆するニュアンスが入っている。「農村の高級幹部」は「中国」、「下部組織」は「日本」を示唆する。

また、「(もし一帯一路に加盟したければ、)政策と行動で示せ」という言葉は、まさに「今さら、のこのこと入ってきたいのなら、その覚悟はあるだろうね」という完全な「上から目線」を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新たな「エプスタイン文書」公開、ゴールドマンやHS

ワールド

USMCA「生産に不可欠」、自動車大手各社が米政権

ワールド

OPECプラス、26年第2四半期以降は増産か=HS

ビジネス

スポティファイ、第4四半期営業益は予想上回る見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中