最新記事

謀略

プーチン露大統領の米大統領選「干渉作戦」 機密文書が裏付け

2017年4月21日(金)12時50分

4月19日、プーチン大統領(写真)の支配下にあるロシアのシンクタンクが、2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選するよう計画を立て、選挙制度に対する有権者の信頼を損ねたと、米国の現旧当局者がロイターに明らかにした。モスクワで5日代表撮影(2017年 ロイター)

プーチン大統領の支配下にあるロシアのシンクタンクが、2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選するよう計画を立て、選挙制度に対する有権者の信頼を損ねたと、米国の現旧当局者がロイターに明らかにした。

米情報機関が大統領選後に入手したロシア戦略問題研究所の機密文書2つを挙げ、ロシアが米大統領選に徹底的に干渉しようとしたと同機関が結論づけた構想と根拠を示すものだと、米国の当局者3人と元当局者4人がロイターに語った。

同研究所は、プーチン氏の大統領府(クレムリン)によって指名された、ロシア諜報機関の元高官が運営している。

1つ目のロシア文書は戦略報告書で、昨年6月に作成された。ロシア政府上層部に配布されたが、特定の個人に宛てられてはいなかった。

同文書は、当時のオバマ政権よりもロシアに柔軟な対策を取るであろう大統領を選ぶよう米国の有権者を奨励するため、ロシア政府にソーシャルメディアや政府系国際メディアで宣伝活動を開始することを勧めていたと、現旧の米当局者7人は口をそろえる。

昨年10月に起草され、同様に配布された2つ目の文書は、米民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏が勝利しそうだと警告。したがって、ロシアはトランプ氏を支持するプロパガンダをやめて、代わりに、米選挙制度の正当性を損ねるため不正投票に関するメッセージを大量に送り、クリントン氏の評判をおとしめる方が得策だと同文書は主張していたという。

2つの文書の機密性を理由に、匿名を条件としてロイターの取材に応じた現旧当局者7人は、米国による文書入手ルートについて語ることを拒否した。米情報機関も文書についてコメントを差し控えた。

プーチン大統領は米大統領選への干渉を否定している。大統領の報道官と同研究所は、ロイターのコメント要請に回答しなかった。

これら文書は、ロシアが「偽ニュース」キャンペーンを仕掛け、民主党団体とクリントン陣営にサイバー攻撃を行ったとの結論にオバマ前政権が至った要石だと米当局者らは指摘する。

「プーチン氏の頭には初めからそのような目的があり、そのためのロードマップを作成するよう研究所に求めた」と、情報筋の1人である米情報機関の元高官は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米AT&T、携帯電話契約者とフリーキャッシュフロー

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中