最新記事

トランプ政権

迷走人事が浮き彫りにしたホワイトハウスの権力者バノン

2017年2月23日(木)10時30分
ダン・ドゥ・ルース

トランプの側近グループがアメリカの安全保障政策を牛耳りつつある Carlos Barria-REUTERS

<フリン大統領補佐官の辞任、後任を打診した退役海軍中将は辞退――。閣僚人事をめぐるごたごたから浮き彫りになるのは首席戦略官バノンの権力の膨張だ>

トランプ政権が恥をかいた。国家安全保障担当大統領補佐官のマイケル・フリンが就任早々に辞任に追い込まれた上に、その後任に打診したロバート・ハーワード退役海軍中将に断られてしまったのだ。

マティス国防長官とも親しく、党派の枠を超えて評価の高い元軍人だが、人事でホワイトハウスと折り合いがつかなかったことが辞退の理由と言われる。ハーワードは自前の部下を迎えることを望んだが、それが認められなかったようだ。

この一件が浮き彫りにしたのは、トランプ大統領の側近であるバノン首席戦略官・上級顧問(写真右から2人目)の権力が膨張していることだ。バノンはホワイトハウスに君臨し、あらゆる意思決定に影響力を振るっているらしい。政権発足直後の大統領令により、国家安全保障を担う重要機関NSCの常任メンバーにもなった。

【参考記事】「ペンス大統領」の誕生まであと199日?

他の政権ならハーワードの要望は受け入れられただろうが、トランプと側近たちは、大統領選で陣営に参加していなかった「よそ者」に権力を持たせることに極めて消極的だ。実際、もしハーワードが就任していれば、バノンらと衝突したに違いないとみる向きは多い。

フリンの後任候補としてほかに名前が挙がっているデービッド・ペトレアス元CIA長官も、自前のチームを組織できなければ指名を受けないだろう。結局は、資質で劣る人物の中から後任が選ばれそうだ――バノンらに逆らわないことを最優先に。

国防総省高官人事でも同様の問題が起きている。マティスの示す人事案が通らないのだ。ホワイトハウスは、大統領選で反トランプの立場を表明した人物を役職に就かせようとしない。

軍事や外交の専門家ではなく、バノン率いる大統領側近グループがアメリカの安全保障政策を牛耳りつつあるようだ。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は4日続落、米エヌビディア決算控え売買交錯

ワールド

ウクライナ西部で爆発、ロシアがミサイル・無人機攻撃

ビジネス

東京海上、発行済み株式の4.2%上限に自社株買い 

ビジネス

中国人民銀、最優遇貸出金利据え置く見通し 6カ月連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中