最新記事

アメリカ政治

トランプ税制改革を左右する減税効果計測のダイナミック・スコアリング

2016年12月31日(土)19時44分

12月28日、トランプ次期米大統領が来年、どこまで抜本的な税制改革を進めることができるかを決める1つの要素は、議会両院税制合同委員会(JCT)が税制変更がマクロ経済及ぼす影響からのフィードバック効果をどのように判断するかになるだろう。写真はアリゾナ州で8月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

 トランプ次期米大統領が来年、どこまで抜本的な税制改革を進めることができるかを決める1つの要素は、議会両院税制合同委員会(JCT)が税制変更がマクロ経済及ぼす影響からのフィードバック効果をどのように判断するかになるだろう。

 JCTは議会規則に基づき、税制変更が経済成長などを通じて税収に跳ね返ってくる効果を推計する、いわゆる「ダイナミック・スコアリング」の結果を示すことが義務付けられている。このフィードバック効果が大きいほど、財政赤字を抑制できるとみなされる。

 トランプ氏と議会共和党が30年来の大規模な税制改革を計画している中で、JCTに減税推派からかかる圧力は大きい。減税推進派は、フィードバック効果があまりに小さく推計されて、減税法案が財政赤字をさらに大きく増やすと証明されてしまう事態を懸念しているのだ。

 保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の経済政策フェローのデービッド・バートン氏は「問題はJTCのスタッフがフィードバック効果を最小限にとどめるようないくつかの前提条件を採用し、税制改革がもたらす適切な効果を過小評価している点にある」と指摘する。

 実際にJCTが低調なフィードバック効果を公表すれば、共和党は減税の規模を縮小するか、一時的な措置とする可能性がある。そうなるとトランプ氏が選挙中に打ち出した公約は深刻な制約を受けてしまうだろう。

 一方でアナリストからは、フィードバック効果を高めに提示することを求める圧力で政治的に都合の良い数字が作成され、議会を通過する役には立っても結局財政赤字を膨らませる危険性に警鐘が鳴らされている。

 下院では昨年、共和党が主導する形で新たな議会規則が採択されてJCTは、ダイナミック・スコアリングによる1つの推計結果のみを提示しなければならなくなった。それ以前は、推計作業の不確実性を反映して異なったモデルに基づいた複数の推計結果が明らかにされてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏、北朝鮮の国際的地位を強調 党創建記念式典

ワールド

再送-インタビュー:日銀の追加利上げ慎重に、高市氏

ビジネス

訂正-バーFRB理事、追加利下げに慎重 インフレ上

ビジネス

米国株式市場=下落、決算シーズン控え上昇一服
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 5
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 6
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中