最新記事

2016米大統領選

アメリカ大統領選、クリントンの白人支持基盤はなぜ崩壊したか

2016年11月15日(火)19時14分

11月10日、米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏(写真)をホワイトハウスに導くはずだった従来の民主党支持基盤が崩れた背景には、ペンシルベニア州ノーサンプトン郡に暮らすジム・マクアンドリューさんのような有権者が大きな鍵を握っていた。NY市で9日撮影(2016年 ロイター/Carlos Barria)

 米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏をホワイトハウスに導くはずだった従来の民主党支持基盤が崩れた背景には、ペンシルベニア州ノーサンプトン郡に暮らすジム・マクアンドリューさんのような有権者が大きな鍵を握っていた。

 製鋼所の従業員だったマクアンドリューさん(69)はこの半世紀、大統領選では必ず民主党候補に投票していた。だが今年は投票せずに家にいた。ノーサンプトン郡は民主党支持者が多く、ほとんどが白人の労働者階級の地域で、2008年と2012年の大統領選ではオバマ大統領を支持。しかし今年は、共和党のドナルド・トランプ候補が勝利した。

「両候補とも大嫌いだった。だから『勝手にしろ』と言ったんだ」とマクアンドリューさんは話す。彼の妻も生涯、民主党を支持してきたが、今回は独りで投票所に行き、共和党に一票を入れたという。

「こんなことは初めてだ」とマクアンドリューさんは語る。

 ノーサンプトンのような、これまで確実に民主党を支持してきた郡をひっくり返すトランプ氏の能力は、米大統領選での同氏の勝利に貢献した。民主党の選挙戦略にとって防波堤とも言えるペンシルベニアや他の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる中西部・北東部地域で勝利するためには、それは決定的に重要であった。また、フロリダやノースカロライナといった激戦州を制する原動力にもなった。

 だが、各地で熱狂的な支持を集めたトランプ氏の経済的ポピュリズムや「米国第一主義」といったメッセージのおかげ、というわけではない。

 このような郡の一部でトランプ氏は勝利したものの、2012年の大統領選に出馬した共和党のミット・ロムニー候補よりも得票数ははるかに少なかった。当初の見通しによると、今回トランプ氏の得票数が約5970万票であるのに比べ、4年前に敗北したロムニー氏のそれは約6090万票と、ロムニー氏の方が約120万票多かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中