最新記事

日本政治

安倍政権の掛け声ばかりの「未来投資」に陰り、ロシア支援優先で

2016年11月1日(火)21時30分

10月31日、安倍晋三政権が最優先課題の1つに位置付ける「未来投資」の存在感に、陰りが出つつある。写真はニューヨークで9月撮影(2016年 ロイター/Mike Segar)

 安倍晋三政権が最優先課題の1つに位置付ける「未来投資」の存在感に、陰りが出つつある。政府内では年末に向けたロシアへの経済協力に主眼が移りつつあり、優先順位が下がっているとの声が関係者から漏れる。

 安倍政権は発足以来、政策を矢継ぎ早に打ち出すスピード感が市場の好感を呼んできたが、看板の掛け替えに終わるケースが多発するようなら、市場評価にも影響が出かねない。

開催されない2回目の会合

 政府は今年6月にまとめた成長戦略で、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など第4次産業革命を推進する官民会議を設立することを決めた。

 ところが、会議に招く有識者の選定過程で「候補者の多くが既存の会議と重複した」(政府関係者)ことから、産業競争力会議を廃止する一方で「未来投資会議」を新たに設置。閣議決定した官民会議は、設立が見送られた経緯がある。

 未来投資会議は9月12日の初会合以降、開催されていない。個別分野を集中的に審議する下部会合は断続的に行われているが、第4次産業革命を正面から取り上げる議論は乏しい。

 未来投資が盛り上がりを欠く背景には、ロシア支援の存在感の高まりがある。政府は北方領土問題と並行して、対ロシア経済協力の具体策策定に注力している。

 2016年度第3次補正予算の編成や衆院解散とも絡む可能性があり、政府・与党関係者からの注目度は高い。

 一方で、自動車メーカーやIT企業は、第4次産業革命を見据えた研究開発投資をすでに始めている。この分野で具体的な対応を検討するには、相応の専門性と高い技術的知識が求められるが、ともに政府サイドよりは各企業の知見が勝り、政府から企業に具体的な追加対応を求めるには、様々な障害があるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=序盤の上げから急反落、テクノロジー株

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、9月雇用統計受け利下げ観測

ビジネス

FRB当局者、金融市場の安定性に注視 金利の行方見

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝制圧 軍参謀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中