最新記事

2016米大統領選

「オクトーバー・サプライズ」が大統領選の情勢を一気に変える

2016年10月12日(水)11時40分
渡辺由佳里(エッセイスト)

REUTERS

<トランプの「女性蔑視発言」は予想以上の反発を招き、大統領選最終盤の情勢を大きく変化させている。このように本選直前の10月に暴露されるスキャンダルは、投票日までにダメージを挽回するのが難しい>(写真:トランプは発言について謝罪したが・・・・・・)

 アメリカには、「オクトーバー・サプライズ」という政治用語がある。

 11月上旬の選挙結果に影響を与えるような驚くべき情報やスキャンダル(サプライズ)が、選挙寸前の10月に発覚することで、特に大統領選で話題になる。

 なぜかと言えば、国民はネガティブな情報でもすぐに忘れるので、時間さえあればダメージを受けた候補が人気を取り戻す余地はあるからだ。だが、選挙寸前のスキャンダルは、その余裕を与えない。ライバル陣営が、最も大きなダメージを与える情報を最後の最後までとっておいて、オクトーバー・サプライズとしてリークすることもある。

【参考記事】トランプにここまで粘られるアメリカはバカの連合国

 今回の選挙では、民主党の党大会寸前の7月に、民主党全国委員会(DNC)のデビー・ワッサーマン・シュルツ委員長ら幹部数人の合計約2万通に上るメールのやり取りを、内部告発サイトのウィキリークスが公開する事件があった。流出したメールの中には、DNCを攻撃するサンダースの取り扱いについて弁護士に相談したり、サンダースの信頼を失墜させる方法を探ったりするものもあった。

 この事件によって委員長は退任し、アンチ・トランプで団結しかけていた民主党には大きな亀裂が入った。かつてないほど多くの有権者が第三政党の候補(ゲーリー・ジョンソンとジル・スタイン)を支持しているのは、このリークの影響もある。

 7月の時点で、民主党は「テクニックから、ハッキングにはロシア政府が絡んでいることが疑われる」と主張してきた。そして、今月7日には、アメリカ政府(国土安全保障省など)も、ロシア政府がアメリカの大統領選を操作するためにハッキングに関与していたと公式に批判した。ハッキングの対象になったのは、DNCやヒラリー陣営のコンピュータだけではない、個人のコンピュータやデータベースも、だ。

 ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジは、その後も「クリントンについて、もっと多くの電子メールを公開する」と予告し続け、それが7月よりダメージが大きいものであることを匂わせていた。

 ところが、「オクトーバー・サプライズ」は、まずトランプにやってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米の協議要請「保留」 レアアース規制巡り=U

ワールド

フランス新内閣発表、主要ポスト留任 予算への圧力強

ワールド

中国、北朝鮮と関係発展の用意 戦略的協力強化へ=K

ワールド

トランプ氏「ガザ戦争は終結」、人質解放待つイスラエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中