最新記事

災害

巨大ハリケーン直撃のハイチにアメリカが海兵隊を派遣

2016年10月7日(金)14時50分
シボーン・オグレイディ

Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

<大型ハリケーン「マシュー」が上陸したハイチで、南部沿岸地域を中心に壊滅的な被害が発生。アメリカは大規模な米軍支援部隊の派遣を決めた> (写真は、マシューの直撃を受けた住宅街)

 ハリケーンの強さを示す5段階評価で4の強さの大型ハリケーン「マシュー」が、秒速60メートル以上の暴風を伴ってカリブ海を北上中で、アメリカ東海岸の南部フロリダ州に近づいている。4日にマシューが上陸したハイチでは、これまでに洪水や強風で少なくとも108人が死亡した。

「ハイチ南岸の都市レ・カイからティビュロンまでの全域が壊滅的な被害を受けた」と地元政治家のピエール・ルイ・オスティンは、AFP通信に語った。

【参考記事】アイラブユー、神様──『国境なき医師団』を見に行く(ハイチ編11最終回)

 マシューは過去10年間にカリブ海を襲ったハリケーンでは最大規模で、破壊力も最強レベルだ。またアメリカの東海岸を襲ったハリケーンとしては、2012年のハリケーン「サンディ」以来の強さとなる。

webw161007-haiti02.jpg
ハイチ西部レ・カイの様子(5日) Andres Martinez Casares-REUTERS

 今回の災害で、米軍は支援活動を行う予定だ。地球温暖化の影響で、気象災害の支援活動は各国軍隊の主要な任務となっている。

【参考記事】ハイチ大地震はオバマの「カトリーナ」
【参考記事】ハイチ地震はアメリカの大量破壊実験?

 米軍はマシューで被災したハイチに、空母「ジョージ・ワシントン」や病院船「コンフォート」、輸送揚陸艦「メサ・ベルデ」とともに300人の海兵隊員を派遣した。

 さらに国防総省は、ハイチの首都ポルトープランスにマシュー対策の統合任務部隊を設置した。緊急事態に対応するためホンジュラスに9機のヘリコプターを待機させる他、国防総省報道官によると、カリブ海全域のハリケーン被害の支援のための1100億ドルを準備している。

米フロリダ州も直撃か

 一方マシューが接近するアメリカでは、フロリダ州で150万人に避難命令が出ている。マシューは現地時間6日夜に最接近する見込みで、フロリダからノースカロライナにかけての沿岸部では各州軍の4500人が警戒にあたっている。

 アメリカ国立気象局は6日、「沿岸部の壊滅的な被害が予想される」という警報を出し、4年前にハリケーン「サンディ」がニュージャージー州に残した被害を遥かに上回る規模の被害が出るおそれがあると警告している。また多数の犠牲者が出る可能性もあるという。

 そうだとしても、マシューの被害はハイチの方が甚大だろう。2010年に発生した大地震では30万人以上が死亡したが、以前から脆弱だった社会インフラはこの地震でさらに弱体化した。地震発生後には、コレラの蔓延も起きている。

【参考記事】ツイッターはハイチを救えない

 今回のハリケーン被害で、ハイチの北部と南部を結ぶ橋が破壊されたため、特に被害が大きかった沿岸部の被災地に支援が行き届かないおそれも出てきている。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中