最新記事

イタリア

先進国イタリアの大惨事は腐敗と無能による人災?

2016年9月9日(金)16時00分
アレッシオ・コロンネリ

Adamo Di Loreto-REUTERS

<地震後には完璧な対応を見せるイタリアだが、本当に必要なのは地震対策の強化だ>(ペスカーラ・デル・トロントの被災現場での救助活動)

 なぜイタリアでは、数年おきに発生する大地震でこれほど多くの死者が出るのだろう。

 8月24日未明にイタリア中部を襲ったマグニチュード6・2の地震。震源地に近く甚大な被害を受けたアマトリーチェを中心に、300人近い命が失われた。行方不明者も多く、死者数はさらに増える見通しだ。

「困難なときにイタリア人は何をすべきか知っている」とレンツィ首相が語ったように、すぐさま救助活動が開始され、食料やテントが運び込まれ、輸血も準備された。緊急対応は完璧だ。それもそのはず、イタリアはこうした事態を十分過ぎるほど何度も経験してきたのだから。

【参考記事】国民投票とポピュリスト政党、イタリアの危険過ぎるアンサンブル

 イタリアには多数の活断層がある。アフリカプレートによって北向きに絶えず押された状態で、アペニン山脈の下を走る大きな活断層がリグリア州からウンブリア州を貫いている。それより小さい活断層がアルプス山脈の下を走り、ここでも地震が起きる。

 確かにイタリアは地震の頻発地帯だ。しかし世界には、今回のイタリア中部地震と同じくらいの大きさの地震が起きても、これほど多数の死者を出さずに済んでいる国は多い。日本で同じ規模の地震が起きても、うっかり閉め忘れた戸棚からコップが落ちて割れる程度だろう。

 ところがイタリアは、豊かで科学技術も進んだヨーロッパにありながら、少し大きめの地震が来たらいつも大惨事だ。地震対策がなっておらず、どこから手を付けたらいいか分からないほど問題が多過ぎる。

耐震補強後のはずなのに

 長い歴史を持つ国ゆえの問題はあるだろう。人口6000万人のうち、2200万人が暮らす地域の建築物は、イタリアで耐震建築の基準が定められた74年以前のもの。学校や病院などの公共施設を除けば、それらはほとんどが耐震補強されていない。多数の犠牲者が出るのは建物の古さと、古代建築への愛着のせいと言えなくもない。

 だが今回アマトリーチェで、12年に78万3000ドルをかけて耐震工事した小学校が倒壊した理由はどう説明するのか。崩れ落ちた町の病院や、近くの町アックーモリの鐘塔も新基準に沿って改築されたはずだった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中