最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

サンダースが敗北を認めない民主党の異常事態

2016年5月19日(木)18時20分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Lucy Nicholson-REUTERS

<民主党予備選で勢いに乗るサンダースはマジックナンバー獲得の可能性がなくなっても敗北を認めようとしない。党大会まで持ち込んでヒラリーに逆転する最後のシナリオに賭けているのだが、最終局面までもつれこんで党大会が混乱すれば本選で「敵を利する」ことは明らかだ>

 今月17日にケンタッキー州とオレゴン州で民主党の予備選が行われた。ケンタッキーではヒラリー・クリントン候補が46.8%、バーニー・サンダース候補が46.3%と僅か0.5ポイント差でヒラリーが辛くも勝利した。オレゴンでは、56%対44%でサンダースが圧勝している。

 今回の結果の意味合いだが、ケンタッキーは「ヒラリーが連敗を止めた」という見方もある一方で、強かったはずの南部でもサンダースに猛追されたという厳しい見方もできる。

 一方のオレゴンに関しては、6月7日の天王山となるカリフォルニア州予備選の前哨戦として、サンダース陣営にとって勝利の意味は大きい。

 このように依然としてサンダースの勢いは止まっていない。しかし肝心の獲得代議員数では、ヒラリーは2295まで数字を伸ばし、過半数超えのマジックナンバー2383に達するのは時間の問題になっている。一方のサンダースは、実は「過半数超え」の可能性は事実上なくなっている。

 問題は、サンダース陣営には指名獲得の最後の作戦が残っていることだ。それは3段階のステップを踏むシナリオである。

【参考記事】打倒トランプへヒラリーが抱える弱点

 第1段階では、カリフォルニアまで選挙戦を「完走」して、最後まで勢いを見せる。

 第2段階は、そのうえで堂々と党大会に乗り込み、ヒラリーがほぼ独占している「スーパー代議員」に対して、民意を反映せよと強く迫る。結果として、現在は521対41と圧倒的多数がヒラリー支持を表明している党幹部、党所属議員たちの一部をサンダース支持に翻意させ、第1回投票で「ヒラリー過半数に達せず」のサプライズに追い込む。

 そして第3段階として、党大会が「第2回の決選投票」を行い、そこで代議員の多くが予備選の結果にも事前に明らかにした支持表明にも縛られない「白紙に戻しての自由投票」となり、最後にサンダースが勝利する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀保有国債は高水準、イールドカーブに作用続ける=

ワールド

中国、フィリピン船を「追い払った」と発表 スカボロ

ワールド

アジア太平洋、軟着陸の見込み高まる インフレ低下で

ビジネス

暗号資産の現物ETF、香港で取引開始 アジア初
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中