最新記事

北朝鮮

中国犯罪組織に「売買」される北朝鮮の女性たち

国内で売春が広がっており、それに目をつけた中国の人身売買業者が10~20代の女性を買って中国の売春宿に多数送り込んでいる

2016年3月28日(月)16時37分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

女性たち 国連で先週、北朝鮮の人権侵害を非難する決議が採択されたが、北朝鮮女性の人権状況を改善することは果たして可能なのか(写真は本文と関係ありません、2011年撮影、平壌北東の羅先特別市にて) Carlos Barria-REUTERS

 国連の人権理事会は23日、北朝鮮における人権侵害を非難する決議を採択した。決議のベースになっているのは「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)だ。

 国連報告書に記された北朝鮮の人権侵害状況は多岐にわたる。その中で、女性の人権状況と関連し「女性や少女は人身売買の被害を受けやすく、また、性的取引及び売春への従事が増加している」と指摘している。

 実際、こうした女性に対する人権侵害に関しては、北朝鮮国内から数多くの情報が漏れ伝わっている。

(参考記事:17歳で中国人男性に売られ...脱北女性「まだまだ幼い被害者が大勢いる」

 この北朝鮮女性の人身売買については、今なお現在進行形だ。その舞台となっているのは中朝国境。つい最近では、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が、次のような実態を伝えた。

 中国の犯罪組織と結託した売春斡旋業者は、北朝鮮国内の人身売買ブローカーに「若くてきれいな女性を送ってくれ。経験者でも構わない」と要求する。ブローカーは、北朝鮮の清津(チョンジン)、咸興(ハムン)、南浦(ナンポ)などの「待機所(違法宿泊所)」を回る。そして、売春を行っている女性を「中国に行けば大儲けできる」などと言って誘い、中国に送り出す。彼女たちは、中国で売春に従事させられるだけでなく、不法入国者ということから強制送還の恐怖にも怯えなければならない。もちろん、何ら法の保護を受けられない。

 ある脱北女性(30代)によると、「中国で結婚させてやる」と言われて、脱北したものの強制的に売春に従事されられるケースもある。その一方で、中国人男性と結婚し、子どもを産んで暮らすケースもある。しかし、結婚相手やその家族に暴力を振るわれたり、子どもを奪われたりするなど、必ずしも平穏な暮らしを送れるわけではない。

 また、人身売買とは違った形で中国人男性と結婚した北朝鮮女性が、公安当局により摘発。北朝鮮に強制送還され、家族が離ればなれになるケースも多数報告されている。送還された女性が、当局にひどい目に合わされるのは言うまでもない。

 こうした人身売買が横行する背景には、北朝鮮国内で売春が広がっていることがある。90年代中盤からの経済難によって広がった売春は、組織化が進んでいる。これに目をつけた中国の人身売買業者は、10代、20代の北朝鮮女性を中国人民元で2万元から3万元(約36万~54万円)で売買しながら、上海の南の浙江省や福建省の売春業者に送り込んでいるという。

(参考記事:北朝鮮、組織化する売春業...バス停が「風俗案内所」

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、EPA長官にオクラホマ州司法長官指名へ

ワールド

カナダ中銀が金利据え置き、ハト派色薄れ利下げの可能

ビジネス

米求人件数、10月は553.4万件に減少 求人率は

ワールド

レンツィ伊首相、辞表提出 大統領が各政党と今後の対

MAGAZINE

特集:THE FUTURE OF WAR 未来の戦争

2016-12・13号(12/ 6発売)

AI、ドローン、ロボット兵士......進歩する軍事技術は 新時代の戦場と戦闘の姿をここまで変える

人気ランキング

  • 1

    マドンナ、トランプに投票した女性たちに「裏切られた」

  • 2

    トランプ、ボーイングへのエアフォース・ワンの注文取り消しを要請

  • 3

    ネパールの被災地に巣くう人身売買ビジネス

  • 4

    民族大虐殺迫る南スーダン。国連安保理の武器禁輸措…

  • 5

    スー・チーにも見捨てられた?ミャンマーのロヒンギ…

  • 6

    トランプが仕掛ける「台湾カード」 中国揺さぶりのも…

  • 7

    インターポールも陥落、国際機関を囲い込む中国の思惑

  • 8

    安倍首相の真珠湾訪問は、発表のタイミングもベスト

  • 9

    「トランプとプーチンとポピュリストの枢軸」が来年…

  • 10

    人民元、関税、南シナ海──トランプの対中批判はどこ…

  • 1

    トランプ-蔡英文電話会談ショック「戦争はこうして始まる」

  • 2

    トランプ氏、ツイッターで中国批判 為替・南シナ海めぐり

  • 3

    マドンナ、トランプに投票した女性たちに「裏切られた」

  • 4

    イギリス空軍、日本派遣の戦闘機を南シナ海へ 20年…

  • 5

    「3.9+5.1=9.0」が、どうして減点になるのか?

  • 6

    内モンゴル自治区の民主化団体が東京で連帯組織を結…

  • 7

    インターポールも陥落、国際機関を囲い込む中国の思惑

  • 8

    トランプ、ボーイングへのエアフォース・ワンの注文…

  • 9

    東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃな…

  • 10

    新卒採用で人生が決まる、日本は「希望格差」の国

  • 1

    トランプファミリーの異常な「セレブ」生活

  • 2

    「トランプ勝利」世界に広がる驚き、嘆き、叫び

  • 3

    注目は午前10時のフロリダ、米大統領選の結果は何時に分かる?

  • 4

    68年ぶりの超特大スーパームーン、11月14日に:気に…

  • 5

    米大統領選、クリントンはまだ勝つ可能性がある──専…

  • 6

    トランプ勝利で日本はどうなる? 安保政策は発言通…

  • 7

    【敗戦の辞】トランプに完敗したメディアの「驕り」

  • 8

    安倍トランプ会談、トランプは本当に「信頼できる指…

  • 9

    トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実

  • 10

    「ハン・ソロとレイア姫」の不倫を女優本人が暴露

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「五輪に向けて…外国人の本音を聞く」
リクルート
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

『ハリー・ポッター』魔法と冒険の20年

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月