最新記事

欧州難民危機

非正規流入移民に関しEU=トルコが強制送還で合意

国連や人権団体は非人道的なやり方だと一斉に懸念を表明

2016年3月9日(水)19時59分

3月8日、欧州連合(EU)は非正規ルートで欧州に流入した移民や難民をいったんトルコに全員送還することでトルコと大筋合意した。写真はEUの旗。ブリュッセルで昨年10月撮影(2016年 ロイター/Francois Lenoir)

 欧州連合(EU)は非正規ルートで欧州に流入した移民や難民をいったんトルコに全員送還することでトルコと大筋合意した。これについて国連や人権団体は8日、国際法に違反する可能性があると警告した。

 フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「国際法に基づく難民保護措置について知らせることなく、ある国から別の国に一斉送還するやり方を深く憂慮している」と仏ストラスブールの欧州議会で述べた。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、一斉送還は「国外に亡命する権利に致命的打撃をもたらす」と懸念を表明。

 国際医療援助団体「国境なき医師団」は、冷ややかで非人道的なやり方だと批判した。

 トルコのダウトオール首相は、この案はシリア難民が欧州で合法的な保護を求めるのを妨げるものではない、と主張。「ここでの狙いは、非正規の移民流入を食い止め、EUが受け入れるべきシリア難民をわが国の仮設キャンプにおいて見極めることだ。合法ルートの移民を意に反して送り返すつもりはない」と述べた。

 欧州委員会も、この合意は中東などからの大量の移民流入に歯止めをかけるものであり、完全に合法的だと主張した。

 メルケル独首相は、13日のドイツ地方選挙を前に移民に対する有権者の不安を和らげる狙いもあり、合意を後押しした。首相は昨年だけで100万人近いシリア人、イラク人、アフガニスタン人らがドイツに押し寄せたが、事態は最終的に正しい方向に進んでいると述べた。トルコが難民を人質に欧州を脅迫した、との見方は否定した。

 7日、ブリュッセルで開かれたEU加盟28カ国首脳とトルコのダウトオール首相の会議では、移民の一斉送還とともに、その見返りとして、EUからトルコへの資金支援を増額し、トルコ国民のEUへのビザ(査証)なし渡航を前倒しし、トルコのEU加盟交渉を加速させることでも、基本的に合意した。

 移民問題で協力を拡大するトルコの大胆な提案を、EU首脳が受け入れる形となったが、最終的な合意は次回3月17─18日の首脳会議で行う予定。また、調整の必要な点もいくつか残っている。

 

[ジュネーブ/ブリュッセル 8日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き マックレム総裁「不確実性

ワールド

次期FRB議長候補、追加も絞り込みもなし=米財務長

ワールド

米政権の移民政策を批判の議員、演説中に液体かけられ

ワールド

米財務長官「強いドル政策」堅持、円支援の為替介入を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 5
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 6
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案…
  • 9
    筋トレ最強の全身運動「アニマルドリル」とは?...「…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中