最新記事

家族

震災から5年、失われた子どもを捜し続ける人びと

高レベルの放射線を浴びながら、津波にさらわれた家族を追い求めた1800日

2016年3月8日(火)09時49分

東日本大震災による津波で破壊された住宅が、福島県大熊町の帰宅困難区域に取り残されている。2月13日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

 2011年3月11日の東日本大震災は、約1万6000人の命を奪った。2500人以上が今なお行方不明のままだ。津波による事故が起きた東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所の近くに住んでいた人たちは、とりわけ深いトラウマを負った。

 上野敬幸さん(43)は5年前、津波にさらわれた家族を捜すため、高レベルの放射線に自身をさらすことを一瞬たりとも躊躇(ちゅうちょ)しなかった。

 上野さんの母親と娘の永吏可(えりか)さんの遺体は見つかった。それでも、上野さんは放射能や身を切るような寒さをものともせずに、福島原発近くの海岸で、父親と当時3歳だった息子の倖太郎(こうたろう)君の遺体を今も捜し続けている。

「子どもを守ることが一番の親の務め。子どもを守ることができなかった最低の親だと思っているので、そのことを子どもたちに謝らないといけない」と、上野さんは語る。

「永吏可は抱きしめて、謝ることができた。抱きしめながら、ごめんなさいと言うことができた。だけど倖太郎にはまだそのことができていない」

 上野さんは現在、原発から北に22キロの場所で暮らしている。

 原発から南に3キロの場所で生活していた木村紀夫さん(50)は当時、父親と妻、そして下の娘の汐凪(ゆうな)ちゃんを捜すためにこの場に残るか、母親と上の娘を放射能から遠ざけるために避難するかの選択を余儀なくされた。

「そのまま捜せない状況で残していくのは、もちろん後ろ髪を引かれる思いだった。戻ってきたときにはかなり時間が経っていたので、捜すことはその時点でかなり厳しい状況になっていた。生きて見つけるという意味では」と、木村さんは当時を振り返る。

 福島原発事故は、家族で唯一見つかっていない汐凪ちゃんを捜す木村さんの努力を今なお妨げている。高レベルな放射線量のため、自宅のあった大熊町の半分は立ち入りが制限されている。

ニュース速報

ワールド

焦点:中東和平、トランプ氏の「1つの国家」言及で一

ビジネス

アングル:中国企業、株式の私募発行ブームは風前の灯

ワールド

アングル:大荒れのトランプ大統領単独会見、記者から

ビジネス

米国株はダウ7日連続で最高値更新、クラフト急伸しエ

MAGAZINE

特集:トランプを操る男

2017-2・21号(2/14発売)

トランプとホワイトハウスを裏で仕切る男──。首席戦略官スティーブ・バノンの恐るべき世界観

人気ランキング

  • 1

    金正男の暗殺事件で北朝鮮の男を逮捕 謎の男の正体は?

  • 2

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 3

    海上自衛隊、18年度から4年間で新型護衛艦8隻建造へ

  • 4

    トランプ初の単独会見は大荒れ けんか腰の大統領に…

  • 5

    一般市民まで脅し合う、不信に満ちた中国の脅迫社会

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 8

    園児に教育勅語唱えさせる幼稚園 園長は日本会議の…

  • 9

    金正男の遺体は北朝鮮引き渡しへ 真相は迷宮入りと…

  • 10

    開発に10年かけた、シャンパン級のスパークリング日…

  • 1

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 2

    金正男クアラルンプール暗殺 北朝鮮は5年前から機会を狙っていた

  • 3

    北朝鮮独裁者、「身内殺し」の系譜

  • 4

    「線路立ち入りで書類送検」が他人事でなくなる侵入…

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    金正男の暗殺事件で北朝鮮の男を逮捕 謎の男の正体…

  • 7

    南シナ海、米中戦争を起こさず中国を封じ込める法

  • 8

    一般市民まで脅し合う、不信に満ちた中国の脅迫社会

  • 9

    部下を潰しながら出世する「クラッシャー上司」の実態

  • 10

    金正男の遺体は北朝鮮引き渡しへ 真相は迷宮入りと…

  • 1

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 2

    トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデターもあり

  • 3

    日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

  • 4

    東芝が事実上の解体へ、なぜこうなったのか?

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    ドナルド・トランプ第45代米国大統領、就任演説全文…

  • 7

    マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の…

  • 8

    トランプ、入国制限に反対の司法長官代行を1時間後…

  • 9

    アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない

  • 10

    トランプの人種差別政策が日本に向けられる日

グローバル人材を目指す

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「日本の新しいモノづくり」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 臨時増刊

世界がわかる国際情勢入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月