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アメリカ社会

【写真特集】不法移民から没収された大量の私物は何を語る

強制送還の際に所持品を没収される不法入国者は、まるで「人間以下」の扱いを受けている

2016年2月8日(月)17時00分
Photographs by Thomas Kiefer

渦巻く不条理 拘束された不法入国者から没収されたベルト。強制送還の際は、ベルトのいらないズボンと靴ひものない靴を身に着ける

 この「アメリカンドリーム・プロジェクト」で私が撮った写真には、合理的な説明を拒否して心をかき乱す何かがある。なぜこれらは捨てられたのか?

 03年7月~14年8月に米税関・国境取締局で清掃員として働いた私は、大量の食べ物や衣類、私物が捨てられているのを目にし、ひどく困惑した。どれも不法移民が本国に送還される前に捨てられたものだ。そのうち食べ物はフードバンクへ寄付したが、積もり積もって総量は60トンに達した。

 身の回りの品々に対しては、食べ物の場合とは違う思いを抱いた。なぜロザリオ(十字架の付いた数珠)や聖書が捨てられた? なぜ財布が? 靴が? どう見ても新品のものが、なぜゴミ箱に放り込まれるのか?

 アメリカ独立から239年。建国の理想はかつてないほど批判にさらされている。希望や公正、民主主義、平等、信仰、神の愛は、一部の人々だけが手にする建前のように感じられるようになった。

 他者をどう扱うかは、私たちが何者であるかの表れだ。ベルトや靴、歯ブラシ、下着、時計、聖書、財布、携帯電話、鍵、宝飾品、水、食べ物、せっけん、薬、経口避妊薬、毛布、ロザリオが不要物として捨てられるとき、その数や出所にかかわらず、不法入国者たちは人間以下の扱いを受けたことになる。

トーマス・キーファー


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「献血者」と書かれたTシャツはゴミ箱に捨てられていた。不法移民だったであろう持ち主は、赤十字に献血をしたのだろうか


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大量の歯ブラシと歯磨き粉。歯ブラシは不要かつ危険な物として処分される

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