最新記事

難民危機

デンマーク「難民財産没収法」に抗議、アイ・ウェイウェイが作品展示を中止

Ai Weiwei Pulls Works from Denmark Display to Protest Refugee Policy

人権を尊重する良き伝統に反して難民に背を向けるヨーロッパへの怒りと無念

2016年1月28日(木)15時56分
スタブ・ジブ

難民と共に 多くの難民が押し寄せるギリシャのレスボス島に拠点を構え、彼らの苦境を伝える艾(右端) GIORGOS MOUTAFIS-REUTERS

 世界的に知られる中国の現代美術家で社会活動家でもある艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、デンマークの議会が26日、難民申請者の財産を没収する権限を当局に与える法案を可決したことに抗議して、デンマークで展示中の作品を撤収すると発表した。

 可決された法案は、難民の流入を抑えることを目的としたもの。難民申請者の所持する貴重品や現金を押収して、難民受け入れに必要な費用に充てる措置が含まれる。艾はフォロワー20万4000人のインスタグラムと同31万人ツイッターで展示中止の決断を発表した。

 艾のインスタグラムのアカウントには27日、次のようなテキストが投稿された。

「艾未未はデンマークの首都コペンハーゲンのギャラリーで開催中の個展を打ち切ることを決定した。この決断は、難民申請者から貴重品を取り上げ、家族の再会を遅らせる措置を認めたデンマーク議会の決定を受けたものだ」

「ギャラリーのオーナーも艾の決断を支持し、デンマーク議会が今日のヨーロッパと中東における最大の人道危機に対し、人権を尊重するヨーロッパ式解決の先駆けとなる代わりに、非人道的な政策への道を選んだことを遺憾に思う」

 ギャラリーのキュレーターは共同通信の取材に応じ、艾がオーナーに電話で決意を伝えたと明かした。艾はデンマーク第2の都市オーフスのアロス美術館に展示されている作品も引き揚げる意向だが、美術館側にはまだ正式な連絡が来ていないという。美術館側はデンマークの難民政策に対する艾の抗議を尊重するとしながらも、「政府の政策のために、国民全員が責めを負うのはいかがなものか」と不満を漏らした。

Ai Weiweiさん(@aiww)が投稿した写真 -


デンマークの非人道的な政策に抗議し、デンマークでの作品展示を中止すると発表した艾未未(右)

 展示中止の発表のほぼ2時間後、艾は皮肉たっぷりに「世界一幸福な国にようこそ」というコピーが躍るデンマークの代表的なビール「カールスバーグ」の広告写真をインスタグラムにアップした。

Ai Weiweiさん(@aiww)が投稿した写真 -


弱者に寄り添うスナップショット

 艾はソーシャルメディアなどを通じて先鋭的なメッセージを発信する社会活動家として知られ、作品にも政治的なメッセージを込めてきた。昨秋にはサンフランシスコの有名な元刑務所アルカトラズでインスタレーションを公開。公民権運動に殉じたマーチン・ルーサー・キングや、アメリカ政府のインターネット監視を暴露したエドワード・スノーデンら、自らの信念によって投獄されたり、国外追放になった多数の人々の肖像をレゴブロックで制作した作品などを展示した。

ニュース速報

ビジネス

中国の長城汽車、フィアット・クライスラー買収に関心

ビジネス

ドイツ経済、今年の成長率は従来予想を上回る可能性も

ワールド

駐ロ米大使館、ビザ発給を大幅に縮小へ 外交官削減要

ワールド

トルコとイラン、クルド人武装勢力対策で軍事協力へ

MAGAZINE

特集:プーチンの新帝国

2017-8・29号(8/22発売)

内向きのトランプを尻目に中東、欧州そして北極へと「新帝国」拡大を目指すプーチン露大統領の野心と本心

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 2

    韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上

  • 3

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 4

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショ…

  • 5

    自動車軽量化へ「木」に脚光 鉄の5倍強い新素材CNF…

  • 6

    「ユダヤ人はシャワーを浴びろ」でスイスのホテルが…

  • 7

    英ケンブリッジ大学がチャイナ・マネーに負けた!---…

  • 8

    韓国・文大統領「日韓の障害は日本政府の変化。日本…

  • 9

    「トランプおろし」はあるか、アメリカ大統領失職の…

  • 10

    「お母さんがねたので死にます」と自殺した子の母と…

  • 1

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 2

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショック死

  • 3

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種の拷問

  • 4

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コ…

  • 5

    バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観…

  • 6

    軍入隊希望が殺到? 金正恩「核の脅し」の過剰演出…

  • 7

    北の譲歩は中国の中朝軍事同盟に関する威嚇が原因

  • 8

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 9

    英グラビアモデルを誘拐した闇の犯罪集団「ブラック…

  • 10

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 1

    マライア・キャリー、激太り120キロでも気にしない!?

  • 2

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 3

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 4

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショ…

  • 5

    日本の先進国陥落は間近、人口減少を前に成功体験を…

  • 6

    北朝鮮、グアム攻撃計画8月中旬までに策定 島根・広…

  • 7

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コ…

  • 8

    米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしま…

  • 9

    対北朝鮮「戦争」までのタイムテーブル 時間ととも…

  • 10

    軍入隊希望が殺到? 金正恩「核の脅し」の過剰演出…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月