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韓国社会

なぜ今「ヘル朝鮮」現象か

2015年12月25日(金)16時00分
スティーブン・デニー(韓国政治研究者)

 ただしその数字は20年間で0.96ポイント低下しているから、虚無感や無力感が社会に広がっているとみることもできる。このトレンドは「ヘル朝鮮」への共感の広がりと一致する。

 より興味深いのは、年齢別の統計だろう。29歳以下の若者の場合、自分の人生を自分で決められると感じるレベルは8.10(90年)、7.54(01年)、6.84(10年)と、社会全体よりもずっと大きく(1.26ポイント)落ち込んでいるのだ。

 確かに若者は20年間一貫して、社会全体よりも人生に自信と希望を抱いているようにみえる。だがその差は90年の0.57ポイントから、10年の0.27ポイントへと縮小している。これも近年、若者の間で失望感が広がっているという見方と一致する。

 いやいや、ほとんどの若者は希望を持って毎日元気に暮らしているという指摘もあるだろう。それは事実だ。しかし長期的な変化を見ると、今を見詰めただけでは分からない懸念すべき傾向がみえてくる。

 確かに誇張は禁物だし、このデータだけでは社会全体の多様な側面は把握し切れない。だが、クが語るような厳しい現実が韓国社会に存在するのも、また厳然たる事実だ。

 ヘル朝鮮という言葉は、その現実に対する若者たちの失望感を表しているのかもしれない。

From thediplomat.com

[2015年11月 3日号掲載]

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