最新記事
BOOKS

【影響力を上げる】目的を遂げるには「共通の課題」を探ること、とは?

2025年3月19日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
たくさんのクエスチョン

私の課題と他者の課題の共通点を探る/※写真はイメージです(pixabay)

<ビジネスでも社会活動でも、人の協力をあおぐには、「共通の課題」を探り、一緒に解決のために取り込むことだという。その具体的な方法とは?>

『影響力を上げる タイガーマスク運動を始めた人の「つなぐ力」』(CCCメディアハウス)は、社会活動家としての実績を持つ河村正剛氏の経験から、ビジネスパーソンにも応用可能な実践的メソッドを提示する一冊である。自らも両親との縁が薄く、中学卒業と同時に独り立ちしなくてはならなかった河村氏は、社会に出てから現在にいたるまで、一貫して恵まれない子どもたちの支援活動を行ってきた。

河村氏は自らの活動の原動力について、こう述べている。「僕は今も自分の出自がわからない。自分が誰だかわからない。この苦悩はたぶん一生続く。僕はこの『苦悩』を人に対する『優しさ』に変える。困っている人を支える『力』に変える。一人でも多くの人を支えたい。この思いは変わらない」。

個人の寄付からスタートした河村氏の支援活動は、「タイガーマスク運動」として全国に広がり、その後は地方自治体をも動かした。2017年から始まった、前橋市でのふるさと納税を活用した支援である。それは「返礼品は、子どもたちの笑顔です」という考えで全国から寄付を集め、児童養護施設の子どもたちが独立する際の支援金にあてるという試みだ。具体的には、「15万円の自立支援金の支給(※現在は20万円になっている)」と「運転免許取得の費用補助」である。この仕組みは、近隣の自治体にも広がった。

しかし、こうした個人の熱意で、実際どのようにして人や行政を動かすことができたのだろう? その秘密が本書では余すことなく語られる。

営業哲学が社会活動に通じる普遍性

業務用カラオケ機材の営業マンとして身につけた「相手のメリットを見つける」という著者の哲学は、本書を貫く重要なコンセプトだ。曰く「一緒に『問題解決』に取り組む姿勢で、より深い信頼関係を築くことができる。物事の本質は、『相手が何を求めているか』を理解すること。『求める』とは言い換えると『解決を求める』である」(79ページ)。単に「何を売りたいか」ではなく「相手が何を必要としているか」に焦点を当てる営業手法は、社会活動においても応用が効くという。

たとえば、行政との連携においては、市長や知事との関係構築に「紹介営業」の手法を取り入れることができる。また、メディア露出というメリットを提供することで関係者の協力を得る戦略が展開される。これは、社会貢献活動は「善意だけでは続かない」という冷徹な現実認識に基づいた実践的アプローチだ。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中