最新記事
中国経済

人民元下落の観測強まる...トランプ関税で通貨安合戦も

2024年12月12日(木)12時48分

これは投資銀行の間で予想されているレンジの下限であり、中国は今回、関税に対してこれまでより万全の備えを講じる決意だという認識が投資家の間で強まった。

ラボバンクの通貨ストラテジー責任者、ジェーン・フォリー氏は、輸出を重視しがちな中国当局が経済のてこ入れを図ろうとした場合に「人民元安を容認する可能性があるという理屈には非常に説得力がある」と述べた。


 

激しく急速に下落も

中国にとって複雑な要素は、人民元が対ドルで下落した場合、ドル以外の通貨、特にアジア通貨に対して人民元レートがどの水準に落ち着くかだ。ベトナムなど近隣諸国の多くは、中国製商品を最終加工し、米国の制裁を逃れるための拠点としての重要性が増している。

イーストスプリング・インベストメンツの為替チームのポートフォリオマネジャー、ロン・レン・ゴー氏は、中国が統制の取れた形で段階的に人民元を切り下げると予想しつつも「アジア通貨、とりわけ輸出主導型経済の通貨は実効レートベースで人民元と一緒に調整しそうだ」と言う。

中国の輸出企業は、1ドル=7.5元になれば売り始めることを念頭にドルを貯め込んでいる。しかし同時に、人民元建てでインボイスを発行するなど、為替リスクを根本から回避する方法も追求してきた。人民元が今年、他通貨に対して上昇したことで、そうした動きはさらに強まった。

HSBCのニューマン氏は、中国が人民元を積極的に下落させれば、極端に安い中国製品から産業を守るために他の国々も関税を引き上げて「関税が滝のように降ってくるリスクが高まる」と警告。「他の貿易相手国で反動を引き起こしかねず、中国の利益にならない」と話した。

もちろん、最も大きな不確実性は米国の関税のスピードと規模にある。トランプ氏が急いで直接的な行動を起こすことはない、と予想する向きもいる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

FRB理事候補ミラン氏、政権からの利下げ圧力を否定

ワールド

ウクライナ安全保証、26カ国が部隊派遣確約 米国の

ビジネス

米ISM非製造業指数、8月は52.0に上昇 雇用は

ビジネス

米新規失業保険申請、予想以上に増加 労働市場の軟化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中