最新記事

日本政治

竹中平蔵慶應義塾大学教授「2016年安倍政権に求められるアベノミクスの"リセット"」

公共インフラ運営を民間に委ねる形でのリニア新幹線開通など、スケールの大きな政策論議が必要

2016年1月7日(木)14時27分

竹中平蔵・慶應義塾大学教授は、安保一色から経済重視へ回帰した安倍政権に必要なのは、政策の「リセット感」だと指摘。写真は1月4日、都内の官邸で年頭の記者会見を行う安倍晋三首相(2016年 ロイター/Toru Hanai)

 安保一色から経済重視へ回帰した安倍政権に必要なのは、政策の「リセット感」だと、竹中平蔵・慶應義塾大学教授は指摘する。具体策としては、公共インフラ運営を民間に委ねるコンセッション方式を活用した東京・大阪間リニア新幹線開通など、スケールの大きな政策論議の必要性を説く。

 同氏の見解は以下の通り。

国税庁と年金機構を統一し、歳入庁新設を

 2016年は、アベノミクスのリセットがうまく行くかが問われる年だ。リセットには、2つの側面がある。1つは、14年4月の消費税増税後に落ち込んだ経済の仕切り直し。もう1つは、世間に映る政策論議の印象を安保一色から経済重視に引き戻すことだ。

 実は、このいずれのリセットボタンも15年後半にすでに押されているが、「リセット感」はまだ十分に出ているとは思えない。

 例えば、名目国内総生産(GDP)600兆円目標を掲げるのは良いが、これは従来の成長率目標(実質2%・名目3%程度)を言い換えただけに過ぎない。名目3%成長を6年続けたら、現在500兆円のGDPが1.2倍の600兆円になるのは自明の理だ。

 また、法人減税の前倒しが話題になっているが、現在32%台の実効税率を29%台へ引き下げることは、国際標準に照らせばマイナーチェンジだ。さらに、政府が企業に賃上げや設備投資の拡大を求めるのは自由だが、企業が現預金をため込んでしまうのもデフレ下では合理的な経営判断だったからだ。この姿勢は今後物価が上がってくる中でおのずと変化するだろうが、国内に振り向けられるかは、ひとえに投資機会の多寡にかかっている。

 残念ながら、構造改革によって投資機会を創出する努力を政府が十分に行っているとは思えない。特区レベルの取り組みで例外はあるが、農業・医療・福祉など様々な分野で民間の活力を阻む壁は依然として多い。民間主導の好循環を生むためには、今以上の規制緩和で投資機会を大きく増やしていくことが求められる。

 一方で、財政や社会保障に対する不安も払拭(ふっしょく)しなければならない。はっきり言って、歳出削減に向けた流れは、小泉政権時と比べて大きく後退したままとなっている。小泉政権下の「骨太の方針2006」では、歳出にキャップ(上限)を設けた。しかし、アベノミクス下では単年度のキャップは財政の硬直的な運営を招くとの批判もあり、18年度に中間目標を設け、いわば複数年で緩やかなキャップを設けた形になっている。

 緩やかなキャップしか設定できないのであれば、歳入面でやるべきことがあるだろう。例えば、税や社会保険料の徴収漏れ対策だ。

ニュース速報

ビジネス

「MRJ」初号機納入は最大で2年延期、2020年半

ワールド

テヘランで高層ビル火災、消火中に崩壊 消防士ら20

ビジネス

お知らせ:重複記事を削除します

ビジネス

ドル調達コストは高止まり、金融不安定化回避が責務=

MAGAZINE

特集:トランプ・ワールドの希望なき幕開け

2017-1・24号(1/17発売)

ドナルド・トランプがついに米大統領就任へ──。「異次元の政治家」にできること、できないこと

人気ランキング

  • 1

    北朝鮮外交官は月給8万円、「誰も声をかけてこない」悲哀

  • 2

    日本はワースト4位、「経済民主主義指数」が示す格差への処方箋

  • 3

    オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」

  • 4

    トランプ支持者が抱える、ある深刻な分裂

  • 5

    【ダボス会議】中国が自由経済圏の救世主という不条理

  • 6

    ロボット化する社員が企業の倫理的問題を招く

  • 7

    米メディアはなぜヒトラーを止められなかったか

  • 8

    「大統領弾劾」の余波が日韓の雪解けを直撃する

  • 9

    スコセッシ『沈黙』、残虐で重い映像が語る人間の精…

  • 10

    ソロス氏「トランプ大統領で市場は低迷へ、政策は失…

  • 1

    韓国ユン外交部長官「釜山の少女像は望ましくない」

  • 2

    オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

  • 3

    「南シナ海の人工島封鎖なら、米国は戦争覚悟すべき」中国紙が警告

  • 4

    オバマ、バイデン副大統領に最後のサプライズで勲章…

  • 5

    南シナ海の人工島封鎖で米中衝突が現実に?

  • 6

    トランプ当選初会見でメディアを批判 ツイッターな…

  • 7

    ダライ・ラマ制裁に苦しむ、モンゴルが切るインドカ…

  • 8

    北朝鮮が国家ぐるみで保険金詐欺、毎年数十億円を稼ぐ

  • 9

    トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジ…

  • 10

    共和党が議会を握っても、オバマケアは廃止できない?

  • 1

    オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

  • 2

    キャリー・フィッシャー死去、でも「2017年にまた会える」

  • 3

    「知能が遺伝する」という事実に、私たちはどう向き合うべきか?

  • 4

    トルコのロシア大使が射殺される。犯人は「アレッポ…

  • 5

    トランプ当選初会見でメディアを批判 ツイッターな…

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    日本の制裁措置に韓国反発 企画財政省「スワップ協…

  • 8

    韓国ユン外交部長官「釜山の少女像は望ましくない」

  • 9

    安倍首相の真珠湾訪問を中国が非難――「南京が先だろ…

  • 10

    独身男性の「結婚相手は普通の子がいい」は大きな間…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本の観光がこれで変わる?
リクルート
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 臨時増刊

世界がわかる国際情勢入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月