最新記事

セックスロボット

年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁止を呼びかけ

Sexbots should be banned?

1体84万円に「数千件の予約注文」。AI研究者から擁護論も

2015年9月18日(金)17時00分
高森郁哉(翻訳者、ライター)

パートナー? ラブドールに人工知能(AI)が搭載されるという (写真:アビス・クリエーションズ社より)

 米ニュージャージー州に拠点を置く新興企業トゥルーコンパニオンが、"世界初のセックスロボット"と銘打つ女性型セックスドール「Roxxxy」(ロキシー)の年内発売を目指している。また、ラブドールを販売しているカリフォルニア州のアビス・クリエーションズも、自社製品に装着可能な、人工知能(AI)を搭載する頭部を開発中だ。

 こうした状況を憂慮し、英デ・モントフォート大学でロボット倫理学を専門とする研究者、キャスリーン・リチャードソン博士らが9月15日、「セックスロボット反対キャンペーン」を立ち上げ、英BBCなどが報じた。同博士は、セックスロボットは女性と子供を「モノ化」する傾向を助長し、人間の共感能力を損なう有害な存在だとして、禁止するよう主張。また、コンピュータ科学者やロボット工学研究者らに向けて、セックスロボットの開発に協力しないよう呼びかけていきたいとしている。

 BBCはトゥルーコンパニオンのダグラス・ハインズCEOにも取材し、「(セックスロボットは)妻やガールフレンドに取って代わるものではなく、交際相手がいない時期の人や配偶者を失った人のためのソリューションだ」という同CEOのコメントを伝えている。記事ではまた、同社が価格を7000ドル(約84万円)に設定したRoxxxyの予約注文を「数千件」受け付けたことや、将来的には「自己学習エンジン」を搭載して所有者と会話したり好みを学習したりできるようにする計画があることを紹介している。

 リチャードソン博士の反対キャンペーンについて、男性が声高に反論しづらいことを見越してか、英ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジでヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)とAIを専門とする女性研究者、ケイト・デブリン博士が17日、「セックスマシンの擁護:なぜセックスロボット禁止の試みが間違いなのか」と題した論考をザ・カンバセーションに寄稿した。デブリン博士は、数世紀にわたるセックスや性同一性に関する閉鎖性が原因で大勢の人々が苦しんできたが、インターネットが情報の共有とコミュニティー構築で状況の改善に貢献したことに言及し、性に関する既存の倫理観をロボットに当てはめて可能性を狭めるべきではないと反論。セックスロボットを全面禁止するのではなく、「人工的なセクシュアリティー」へのアプローチを含め、技術の進歩に伴う新しい時代の性のあり方について議論と研究を進めるべきだと主張している。

映画『エクス・マキナ』



 よく知られるように、セックスロボットのアイデア自体はSF作品でたびたび使われていて、映画ではスタンリー・キューブリック原案、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』でジュード・ロウがセックスロボット役を演じていたし、英国で今年1月に公開された『エクス・マキナ』(日本公開は未定)にも、高度なAIヒューマノイドが担うセックスロボット的側面にかかわる描写がある。一方で、ラブドールが人間のパートナーとして描かれた映画も、ライアン・ゴズリング主演の『ラースと、その彼女』、是枝裕和監督の『空気人形』などが思い浮かぶ。

 創作物の世界ではすでに馴染みのあるセックスロボット(あるいは、パートナーとしてのラブドール)だが、いよいよ現実の製品として市販化されるとなると、公共の場での性的な話題を欧米以上に避けがちな日本でも、そろそろ本格的に議論すべき時期が来ているのかなと思う。倫理的な観点からの検討のほかにも、セックスロボットの普及が未婚率の増加と少子化に拍車をかけることがないよう、何らかの対策が必要になるのかもしれない。


[執筆者]
高森郁哉
米国遊学と海外出張の経験から英日翻訳者に。ITニュースサイトでのコラム執筆を機にライター業も。主な関心対象は映画、音楽、環境、エネルギー。

ニュース速報

ビジネス

中国GDP、第2四半期は予想上回る6.9%増 投資

ビジネス

ECB、ドイツ銀2大株主への特別審査を検討=南ドイ

ビジネス

ユーロ圏に共同予算が必要=シュルツ独SPD党首

ワールド

米共和党、8―10人がオバマケア代替法案に懸念=上

MAGAZINE

特集:日本人が知らないAI最前線

2017-7・18号(7/11発売)

物流、金融、医療、家庭......あらゆる分野で活用が進むAI。人類の常識を覆すこの新技術とどう向き合うべきか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    軍事でも外交でもない、北朝鮮問題「第3の解決策」

  • 2

    「休みたいから診断書をください」--現役精神科医「うつ病休職」の告発

  • 3

    劉暁波の苦難は自業自得? 反体制派が冷笑を浴びる国

  • 4

    太陽エネルギーが石炭産業を殺す日

  • 5

    シャーロックとワトソンの名探偵コンビ、ドラマは衝…

  • 6

    アーティスツ(1):会田誠の不安、村上隆の絶望

  • 7

    トランプ、仏マクロン夫人に痴漢発言「肉体的に素晴…

  • 8

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使…

  • 9

    終章 現代アートの現状と未来

  • 10

    大学も就職も住宅も「損だらけ」のイギリスの若者たち

  • 1

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使わない理由

  • 2

    軍事でも外交でもない、北朝鮮問題「第3の解決策」

  • 3

    トランプ、仏マクロン夫人に痴漢発言「肉体的に素晴らしい」

  • 4

    トランプ最大の試練か マクロンとの高級ディナーは…

  • 5

    ドン・キホーテの格安4Kテレビが速攻で完売した理由

  • 6

    中高年もスマホで支払う中国、20年間もリニア実験中…

  • 7

    危機不感症に陥った日本を世界の激震が襲う日

  • 8

    「休みたいから診断書をください」--現役精神科医「…

  • 9

    死の淵に立っても劉暁波を容赦しない「人でなし」共…

  • 10

    ICBMはミサイル防衛システムで迎撃できない

  • 1

    中国「三峡ダム」危機--最悪の場合、上海の都市機能が麻痺する

  • 2

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使わない理由

  • 3

    アジアに迫るISISの魔手 フィリピン・ミンダナオ島の衝撃

  • 4

    米学生は拷問されたのか? 脱北女性「拷問刑務所」…

  • 5

    就任5カ月、トランプは馬鹿過ぎて大統領は無理

  • 6

    ロンドン高層住宅火災で明らかに イギリスが抱える…

  • 7

    モンゴル人を大量「虐殺」 記憶遺産に値する中国の罪

  • 8

    「地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る」ホー…

  • 9

    資本主義はついにここまで来た。「自分」を売り出すV…

  • 10

    イーロン・マスク「火星移住は生きている間に可能だ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月