最新記事

健康

座りっ放し勤務が寿命を縮める

長時間座るのは喫煙やジャンクフード並みのリスク──そんな研究が相次ぎ、立ち机を使う職場も増えだした

2015年7月7日(火)19時04分
ジェシカ・ファージャー

立つ効果 座る時間を減らすことで心臓や血糖への悪影響を減らせるとの研究が Andrey Popov / iStockphoto

 添加物だらけの加工肉に喫煙、大気汚染......。これらが健康を害する大きな要因なのは今や常識。ところがここに、日々の生活で当たり前の行為が加わることになった。座ることだ。

 平均的な事務仕事の会社員は毎日、7〜10時間以上を椅子に座って過ごす。問題は、科学的根拠に基づいて「寿命を縮める要因」と認められている数々の習慣(トランス脂肪酸の過剰摂取や喫煙など)と同じくらい、座ることが危険だと示す研究が次々と出てきていることだ。

 長時間背もたれに身を預けることは、深刻で慢性的な健康問題を引き起こす可能性がある。例えば......。

■心臓病 座ることが心臓血管系に悪影響を及ぼすという科学的証拠は、1950年代から存在した。イギリスの研究者たちがロンドンのバス運転手(座る仕事)のグループとバス車掌(立つ仕事)のグループの心臓病罹患率を比較したところ、心臓発作やそのほかの心臓疾患の割合は、運転手が車掌の2倍近く高かった。

 長時間座っていると筋肉の脂肪燃焼量はより少なくなり、血流もより不活発に。そのため脂質の塊が心臓の血管に詰まりやすくなる。高血圧や高コレステロールになる可能性も高い。1日当たり8時間以上座る人は4時間以下の人に比べ、心疾患になるリスクが2倍以上だ。

■糖尿病 私たちの体は血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーにして動いている。全身の細胞にブドウ糖を届ける役目をするホルモンが、膵臓で作られるインスリンだ。運動不足が続いて使われない筋肉はインスリンの刺激を受けにくくなって、ブドウ糖の取り込み能力が低下。血糖が下がらない状態が続く。これが糖尿病などの病気につながる可能性がある。

 08年のある研究では、日中長時間座っている人は空腹時血糖値が著しく高いことが分かった。つまり、インスリンがうまく働いていないということだ。11年のある研究では、ほんの1日、長時間座っていただけで、インスリンの作用が低下することが分かった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中