コラム

知られざる数億ションの世界(1)丸見えで恥ずかしい浴室が当たり前?その理由は......

2022年08月02日(火)13時26分

ベッドからよく見える位置にガラス張りの浴室……いったい何のために?  筆者撮影

<一般に公開されることなく販売されることが多い「数億ション」、「10億ション」内部の知られざる世界>

■「知られざる数億ションの世界」第2回の「照明がつかない住戸には大型金庫がある」を読む

キングサイズのベッド正面に浴室があり、しかも総ガラス張り。ベッドから丸見えになるように浴室を配置しているのは、ある種のホテルのものではない。都心部で分譲されているマンションのモデルルームだ。

といっても、当然ながら普通の住戸ではない。

都心部で分譲価格が数億円となる高額住戸=いわば数億ションのモデルルームでは、このようにちょっと恥ずかしい、というか、誰が何の目的で使用するのだろうと首をかしげたくなる寝室+浴室を目にすることが多い。

販売価格が10億円を超える10億ションでは、さらに巨大でジェット噴流付きの浴槽がガラス張り内に設置されることもある。まさに、何のために?である。

まさか、密会の場所として購入?

分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸を若い世代が購入することはまずない。財産を築いた熟年の富裕層が典型的な購入者像となる。が、お年を召したご夫婦が、このように開放的な浴室を好むとは考えにくい。

そこから、「さては、夫が都心のプレイルームとして密かに購入するのか」と想像する人も出てくる。

お金持ちの男性が都心のマンションを購入し、内密にお付き合いする女性と逢瀬を楽しむための部屋、と想像を膨らませるわけだ。

そのように考えたくなるのも無理はないが、それは妄想というべきもの。富裕層といえど、数億円の買い物を妻に内緒で行うことはむずかしい。それ以前に、発覚したとき、言い逃れができないモノを買うはずがない。

では、このような浴室は、誰のために、そして何のためにつくるのか。その理由に、高額マンションの知られざる実情が隠れている。

こんなこともできます、とアピールする場

分譲価格が安くても数億円、高い住戸は10億円以上という高額マンションは、一般に公開されることなく販売されることが多い。

たとえば、総戸数20戸ですべて10億円以上というような物件は、限られた購入者を対象に、ひっそりと販売される。当然ながら、そのモデルルームも一部の人しか見ることができない。

冒頭に掲げた写真は、現在、都心部で分譲されている「パークコート神宮北参道」のもの。全471戸の大規模マンションで、そのモデルルームが昨年11月、マスコミに公開された。その際、高額住戸のモデルルームも公開されたので、主寝室の浴室を撮影した。

マスコミに発表され、写真撮影も許可されたため、特殊な浴室+寝室の写真も公開可能となった。が、これは、レアなケースだ。

戸数規模が小さい高額マンションは、マスコミにモデルルームを公開することはない。特別に取材できても、撮影は不可となるのが普通だ。

つまり、高額マンションのモデルルームにおける浴室の写真は表に出にくい。だから、全面ガラス張り浴室の写真を見て驚いた人も多いだろう。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story