コラム

住み家もシャワーもなく、18時間労働で日給11ドルの苦境

2016年06月28日(火)16時31分

通常なら禁止されている有害な殺虫剤をタバコの栽培に使うことを余儀なくされているウィチョル族の労働者 From César Rodríguez @huicholesdeltabaco

<メキシコのナヤリット州で生まれ育ったセサル・ロドリゲスは、過酷な環境のなか、タバコ農場で長時間低賃金の労働を強いられている先住民族ウィチョル族の問題を写真で世に問う>

 社会問題や人道的な問題は、写真家にとって大きなテーマのひとつだ。メキシコのナヤリット州に生まれ育ち現在も住み続けるセサル・ロドリゲスも、そうした問題をテーマとする写真家である。

 彼が長年追い続けているのは、メキシコの主要なタバコ産地として有名な同州でタバコの栽培に従事する先住民族ウィチョル族たちだ。

【参考記事】暴力と死が蔓延するメキシコで家族写真を撮る意味

 彼らは乾季が終われば、シエラマドレ山脈から沿岸部に降りてきて農場で働く。長時間、低賃金の過酷な労働だ。1日18時間働いて稼げるのは11ドルほど。食べ物もまともに買うことができない。タバコ・シーズン中は、まともな住み家などなく、上水道やシャワーも存在しない。それは悲しくも、農場の殺虫剤や肥料の薬品に身体をコンスタントに接触し続けることを意味する。近くのサンチェゴ川と通じている運河は彼らの主要飲料水であり、身体と服を洗う場所でもあるが、その川自体、メキシコで最も汚染された場所のひとつになっている。

 また、ウィチョル族の大半はシーズン中、家族全員で農場に暮らすため、子供や妊婦も同じ環境に曝される。いや、貧しい彼らにとって、子供たちも重要な労働力だ。そうして、彼らの多くは病気や栄養不良になってしまうが、近くには医者もいない。

 このウィチョル族タバコ労働者たちの問題をプロジェクトとして取り上げたのは、同じメキシコ人としての責任からだとロドリゲスは言う。とりわけ、同じ州で生まれ育った者としての責任だ。彼の写真歴は実質まだ4年ほどだが、写真で食べていけるかどうかの恐怖を追い払って写真家になる決意を固めたのは、この問題がきっかけだった。大きな問題にもかかわらず、ウィチョル族タバコ労働者たちの人道問題は、今までヴィジュアル・メディアでほとんど取り上げられてこなかったからだ。

Abelardo is 6 years old, he can not speak or walk very well. His father says " He was born bad, he cannot walk or talk well". Adding all of this, his father took him to a doctor and was diagnosed with malnutrition in grade 2. According to the UN, in Mexico about 45% of child laborers have some degree of malnutrition. In Nayarit, 7% of these children have malnutrition in grade 3. In this state of malnutrition, the body weight is 60% lower than expected for their age and height, the growth rate is very slow and children suffer from anemia and diarrhea. In addition to cellular functions, it also affects the thermogenesis, which is the body's ability to produce heat, so they are in imminent danger of dying. Abelardo´s family doesn't have the resources to have a healthy diet, their diet at the tobacco fields consists mostly of tortillas, beans, coke, instant soups and some fruit that people give them. - - - - - El es Abelardo, tiene 6 años, no habla ni puede caminar bien. Su padre dice que "así nació", un médico le diagnosticó desnutrición en grado 2. Según la ONU, en México aproximadamente un 45% de los niños jornaleros tienen algún grado de desnutrición. En Nayarit, un 7% de estos niños tiene desnutrición en grado 3. En este estado de desnutrición, el peso corporal es 60% menor al esperado para su edad y talla, la velocidad de crecimiento se hace muy lenta y los niños sufren de anemia y diarreas. Además de las funciones celulares, también se ve afectada la termogénesis, que es la capacidad del cuerpo de producir calor, por lo que están en peligro inminente de morir. La familia de Abelardo no cuentan con los recursos para tener una alimentación sana, su dieta en los cultivos consiste mayormente de tortillas, frijoles, coca cola, sopas instantáneas y algunas frutas que la gente les regala. #igers #mexigers #huicholesdeltabaco #everydayeverywhere #reportagespotlight #everydaylatinamerica #mexcelente #burndiary #dailyphoto #photojournalism #instagood #blackandwhite #bnw #laborers #jornaleros #tobacco #britishtobacco #philipmorris #tabaco #mexico #humanrightshumanwrongs #humanrights #hikaricreative #indigenousrights #hallazgosemanal #WHPimperfections #memomagazine

Huicholes del tabacoさん(@huicholesdeltabaco)が投稿した写真 -

極度の栄養不良のため、満足に歩くことも話すこともできないウィチョル族の6歳の子供

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国が台湾巡り行動するとは考えていない=トランプ米

ワールド

アングル:モザンビークの違法採掘、一攫千金の代償は

ワールド

トランプ氏「非常に生産的」、合意には至らず プーチ

ワールド

「次はモスクワで」とプーチン氏、会談後にトランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story