コラム

首相談話についても、アメリカ人なので語りません

2015年08月31日(月)18時20分

 そこで僕の出番だ! 謝るべきかどうかではなく、何故お詫びを求められ続けるかということだけについて話そう。

 まず挙げられるのは「各国の政府は、内政が厳しいときに反日感情を煽り、国民の怒りの矛先を外に向けさせる作戦を取る」という説明。これは間違いない。その作戦自体は間違っていると思うけどね。やりすぎてだんだん効果が薄れているみたいだし。

 その証拠として、反日感情を煽っている国々から来日する観光客数が年々増えていることがあるだろう。2015年上半期には、こうした国々からの来訪者も合わせ、史上最多の訪日外国人数を記録した。煽ることで増えるなんて皮肉なものだ。

 でもそれだけではないだろう。もう1つの理由として、日本の「反省が伝わっていない可能性」も考えよう。もちろん、これまでに日本政府が謝ってきたのは事実。少なくとも村山首相、中曽根首相、細川首相、小泉首相、安倍首相が謝罪している。

 しかし、各時代の首相が謝っている傍らで、他の政治家たちによる謝罪とは反対の意に捉えられる発言が目立つ。有名な例だと、中曽根内閣時代、藤尾正行文部大臣の韓国併合についての「韓国側にも責任がある」発言。竹下内閣時代、奥野誠亮国土庁長官の日中戦争についての「侵略の意図は無かった」発言。最近だと、「慰安婦制度は必要だった」という橋本徹大阪府知事(当時)のコメントがある。

 行動も紛らわしく見える。5名の首相がおわびをしている一方で、靖国神社へ参拝している戦後の首相は14名。国会議員では数百人に上る。靖国神社は、世界のメディアでWar Shrine(戦争神社)と紹介されている。参拝される人の意図とは関係なく、世界が受ける印象は「お詫び」とは反するものになってしまう。

 今回も謝罪の意をこめた総理談話を発表した翌日に、67名の国会議員が参拝をした。安倍総理は参拝しなかったが玉串料を収めた。こういうことは英語でmixed messageという。その行動により、残念ながら「お詫び」が印象に残らない結果となる。

 日本がどうしても比較されるのは、同じ敗戦国のドイツ。ドイツの歴代の首相ははっきりとお詫びをしている。85年のワイツゼッカー連邦大統領の演説は、今読んでも泣ける。ドイツ政府は行動でも反省の意を表している。

 特に有名なのは、70年にブラント首相がポーランドのユダヤ人ゲットー跡地で跪いて献花したこと。また2004年にシュレーダー首相がフランスのノルマンディー上陸作戦記念式典でシラク仏大統領と抱擁を交わした。これを受けてフランスの新聞は「今日が本当の終戦の日」と書いた。こういうときに、他の政治家から反対の声は出ていなくてmixed messageになってはいない。反省の色はまだら模様ではなく一色の一枚岩だ。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

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