コラム

点字ブロックのアンパンマン、被災者侮辱、カラス生食......炎上を繰り返すツイッターの終焉は意外に近いかもしれない

2023年03月14日(火)21時42分
ツイッター

ツイッターは社会を変えたーー悪い意味でも Dado Ruvic/Illustration-REUTERS

<筆者も最近巻き込まれたが、炎上を繰り返すツイッターの本質はゲームである。敵キャラを倒し、パズルブロックを消すのと同じ感覚でツイートに反応する。そこに建設的な会話は成立しない。魑魅魍魎が跋扈する現在のツイッターはどう考えても異常だ>

アメリカのIT大手メタ(旧フェイスブック)が、ツイッターとよく似たタイプのSNSを開発中だという。イーロン・マスク氏による買収以降、ツイッター社は混乱が続いているため、劣勢に乗じてメタが攻勢を仕掛けようとしているのかもしれない。

私はこれを非常に歓迎している。というのも、日本のネット世論を席巻しているツイッターには、もう何年も前から社会に対する有害性を感じていたからだ。ツイッターは便利で面白いけれど、何かが根本的におかしい。そう思っている人は、決して少なく無いのではないか。私は最近、軽い炎上なども経験して、ようやくツイッターの本質が分かってきた。

キーワードは「ゲーム」だ。より正確に言えば、「スマホゲーム」である。

混雑した電車に乗る時、他人のスマホ画面が目に入る。すると、スマホゲームに興じている人が思いのほか多いことに気づく。『ファミ通ゲーム白書2022』によると、21年の日本のゲーム人口は5535万人で、ゲームアプリの市場規模は1兆3001億円という。

パズドラ、ツムツム、ウマ娘、FGO(Fate/Grand Order)......。私は何となく名前を知っている程度なのだが、電車内ではそうしたゲームの画面を熱心にいじっている人々をよく見る。で、彼らはそのままサッと画面を切り替え、ツイッターを閲覧したりもする。

つまり、ある種の人々にとってツイッターは、スマホゲームとシームレスに繋がっているのだ。このことに気づくと、ツイッター空間の特性が色々と理解できるようになる。

「快・不快」で判断される世界

彼らはまず、ツイッターを開くと獲物を探す。優越感に浸りながら思う存分けなすことができるターゲットを物色するのだ。滝川ガレソあたりのアカウントが、その点では極めて良い仕事をしており、細大漏らさず実にスピーディーに、ネット空間の「バカ」を安定的に供給してくれる。

ゲームの世界では敵と味方が明確に分かれており、敵は叩き潰す対象でしかない。ネット世論がしばしば粗雑で単純な二分法に支配されるのは、彼らがゲームの延長でツイッターを見ているからだ。

敵キャラを戦車でなぎ倒したり、パズルブロックを消したりするのと同じような感覚で、彼らはツイートに反応する。だから、あらゆる言葉が過激になり、言葉のひだや言い淀みといったものが消えてしまう。物事の当否は論理的整合性や社会的妥当性ではなく、「快・不快」によって感覚的に判断される。ゆえに、「この考えは間違っている。なぜなら私が不快だから」という思考回路が平然と成り立ってしまうのだ。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豪サービスインフレにやや粘着性、目標内に抑制が責務

ビジネス

元英首相スナク氏、マイクロソフト上級顧問に就任

ビジネス

ドイツ首相、35年のCO2排出車販売禁止を防止する

ワールド

米政権、中国系航空会社のロ上空飛行禁止を提案 米国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 5
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story