コラム

上空で転倒して骨折のCA、客室乗務員が「若い女性」である必要はあるのか?

2022年04月05日(火)06時30分
CA

客室乗務員が「美女」である必要はもはやないはず Kate Munsch--REUTERS

<3月末、羽田発大分行きの日本航空機が飛行中に突然揺れて客室乗務員の女性の体が宙に浮き、落下して腰の骨を折る、という事故が起きた。気の毒な限りだが、そもそもCAの採用基準は間違っていないか>

洪水のように日々流れてくるウクライナ情勢のニュースに些か食傷気味になっていたところ、「JAL機大きく揺れ客室乗務員が腰を骨折」とのニュースを見た。3月26日羽田発大分行きの機内で、27歳の客室乗務員の女性がギャレーと呼ばれる作業スペースで転倒し、大けがを負ったのだという。機体が大きく揺れ体が宙に浮き、落ちて腰の骨を折ったらしい。気の毒な限りだが、やっぱり客室乗務員(CA)の採用基準は根本的におかしいというのが、私の率直な感想だ。

コロナが始まってからはめっきり減ったが、コロナ前は、私も仕事で国内外に飛行機で移動することがしばしばあった。機内に入り、若い女性の客室乗務員から「接遇」(航空業界では接客ではなく接遇という言葉を好む。単なる接客以上の格別な配慮と丁寧さ、ホスピタリティーを強調したいらしい)を受けると、私は何とも不可解な気持ちになったものだ。

なぜ、美女を配置する必要があるのだ? と。

厳しい接遇トレーニングを経て獲得された、いやに柔和な笑みを明らかに「顔採用」で選ばれた容貌の面々から向けられると、私は日本社会に絶望する。

アナウンサーで「顔採用」が行われるのは、一応分かる。全国民に向かってニュース原稿を読み上げる仕事は紛れもなく「他人から見られる仕事」である。時にはタレント的な振る舞いをも求められるアナウンサーには、外見的な華やかさがあるに越したことはない(今後はこうした価値観も変わっていくのかもしれないが)。

だが、客室乗務員が若く美しい女性である必要は、いったいどこにあるのか。私はガールズバーに遊び来たわけでもなければ、「パパ活」をしに来たわけでもない。安全かつソコソコ快適に、上海なり福岡なりの目的地まで運んでくれれば、それでOKだ。

歴史的経緯があるのは分かる。「夢のハワイ旅行」と言われた1960年代があり、その後の高度成長とバブル景気の90年代初頭まで、航空機は一貫して非日常の特別な乗り物であった。狭苦しいシートに身を縮めて気圧差で耳がキンと痛んだり、小学校の給食のような味付けの機内食に少々首を傾げたとしても、「空の旅」は庶民にとって絶対的な憧れの対象であり続けた。チケット代も、今とは比べ物にならないぐらい高額だった。

そんな一念発起の非日常の記念すべき乗り物で受ける機上のサービスは、最上級のものである必要があった。だからこそ、エアガールやスチュワーデスと呼ばれた時代の彼女たちは、人並み以上の知性と徳性、そして美貌をも兼ね備えた最上級に優秀な人材である必要があったのだろう。

昭和の時代、ビジネス客の大多数は男性であり、その男性たちに少しでも満足して頂くサービスをと考えた理路が、才色兼備の若い女性による行き届いた接客ということになったのだ――。

何もかも時代遅れである。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米韓空軍、10日から2週間の合同演習 次世代機も参

ビジネス

EUの認証変更案、米製大型ピックアップ販売を阻害も

ワールド

世銀、26年の中南米成長率予測を2.1%に下方修正

ワールド

仏大統領、米イラン首脳と電話 レバノンでの停戦順守
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story