コラム

中国、出稼ぎ労働者の子供たちの悲しい現実

2016年04月27日(水)16時30分

 私は今年3月にケープタウンに出張し、その際に南アフリカでのアパルトヘイトの歴史も学びましたが、子供たちが戸籍の違いによって、同じ地域に住んでいるにも関わらず別々の学校に通ったり、同じ学校でも別のクラスに入ったり、食堂も別であったりと、北京市の現状は戸籍に基づくアパルトヘイト以外の何ものでもありません。

 Wang博士は意識改革が必要だ、特に農業戸籍の人々はこれが当たり前なんだと思い込んでいるがそうではないことを知らせる必要がある、と言っていましたが、まったくその通りです。

 第13次5か年計画などをみると、中央の指導者たちも問題の所在に気づいていて、強い言葉で「アパルトヘイト」の是正を求めていることが分かります。しかし、上がいくら語調を強めても、地方政府が姿勢を変えない限り効果がありません。

 しかし、それ以上に重要なのは、「こういうのは差別だ」「こういうことはやめないといけない」と、差別に対する抗議の声を上げる人々が存在することです。いまの中国にはマーチン・ルーサー・キングやネルソン・マンデラが必要ではないだろうか、と報告を聞きながら思いました。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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