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山本雅也×世界のトビラを開けよう!

2013年08月21日
世界中のLCCに実際乗ってみたら。[Vol.2 Zest Airways編]

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前回のセブ・パシフィックにつづいて、LCC搭乗体験談第2弾は、Zest Airways! フィリピン航空、セブ・パシフィックに続く、フィリピン第三番目の航空会社。2008年にフィリピンのジュースメーカー「Zest-O Corp」が資本参入してからZestの名前を冠したそうです。ニノイ・アキノ空港(マニラ)をハブにして、国内を中心に韓国・中国・台湾・マレーシアに航路を広げています。

 

今回乗ったのは、セブ↔マニラの往復深夜便。深夜から早朝にかけて飛行機に乗ると、何だか世界を盗んだような気分になれますね。

23時頃、セブ空港でチェックイン。

チェックイン時。夜中でもスタッフの皆さんが元気です。

チェックイン時。夜中でもスタッフの皆さんが元気です。

飛行機まで300mほど歩きます。コスト削減ですね。

飛行機まで300mほど歩きます。コスト削減ですね。

Zest Airwaysのスタッフは、夜遅いにも関わらずテンションは高め。写真を撮ってくれ!と言わんばかりの笑顔と決めポーズで要求してきます。パスポートを渡すと、僕の名前がMASAYA(偶然にも、フィリピンの公用語であるタガログ語でHAPPYという意味)ということがわかり、これまた大騒ぎ。他のスタッフまで呼びつけ、パスポートを順番に回して見ては大爆笑。寄ってたかって、「You're Happy boy! Welcome to Philippines!!!」やら何やら大歓迎。このノリ、完全に国民性によるものですね。LCCは関係ありません。

笑顔の素敵なCA。制服の色味もほっこり系です。

笑顔の素敵なCA。制服の色味もほっこり系です。

 

今回の価格は、往復で1,623PHP。安い!
■セブ(フィリピン)↔マニラ(フィリピン)約3,800円

最低価格、片道1,600円を切るチケットもありました。価格は、時期・曜日・時間帯によりますが、基本的には平日の深夜早朝便が安いです。期間、席数限定で発売されるプロモーションチケットも狙い目です。

機内には就航地を紹介したオリジナルマガジン。

機内には就航地を紹介したオリジナルマガジン。

機内へ持ち込みできるのは、上限10kg+小さな手荷物のみ。他のLCCもだいたい7〜10kgを上限としています。今回はチェックイン時に計量されましたが、最近はWEBや空港での自動チェックインが可能なLCCも増えてきているので、計量せずに機内に持ち込むことも可能といえば可能です。搭乗ゲートへ向かう途中に計りが置いてありましたが、自主的に測っている乗客はいなそうでした。明らかに持ち込み過ぎな乗客だけがスタッフに注意され、追加料金を払わされているのを目撃しました。まぁ、彼は段ボール3箱とスーツケース(大)をカートに積んでいたのでバレますよね。

搭乗時刻になりゲートを過ぎると一旦外へ出て、飛行機まで滑走路の横を歩きます。通常であれば、ゲートから飛行機まで通路がつながっていて直接乗り込めますが、LCCでは飛行機まで送迎バスに乗るか、徒歩で行かねばなりません。今回はだいたい300mほど歩きました。機内はいたって普通。綺麗でもなく汚くもなく悪くはありませんが、若干古めの印象を受けます。

各座席には、オリジナルマガジンとエチケット袋。エチケット袋の底には、見事な穴が空いているというエンタテインメントも用意されていました。全座席中、何個に穴が空いているのか気になりました。飽きさせませんね。アタリを引いた気分です。離発着はスムースで、飛行中もこまめにCAが機内を回り、ビールや軽食を販売していました。座席自体はやや狭かったものの、飛行時間の短さと価格を考えると何の不満もありません。

エチケット袋が破れているお約束。ご愛嬌です。

エチケット袋が破れているお約束。ご愛嬌です。

ひとつさすがに気になったのは、乗客が降りた後の機内がゴミだらけだったこと。チップスやサンドイッチのビニール、ビールの空き缶、しまいには使用済みオムツが散乱していました。価格が安くなると、利用客のマナーも比例して悪くなるといういい例ですね。民度は大切にしたいものです。

そんな可愛げのあるZest Airwaysですが、2013年3月にAirAsiaがZest Airwaysの株式の49%を取得することが発表されました。平たく言うと買収です。それに伴い、サイトもリニューアル中。

Zest AIrwaysのWEBサイト。AirAsiaへ移行中です。

Zest AIrwaysのWEBサイト。AirAsiaへ移行中です。

http://www.flyzest.com/


AirAsia Zestとしてリブランディングされ、機体も赤く塗り替えられるそうです。
これにより何が起きるかというと、AirAsiaが就航できなかったのニノイ・アキノ空港(マニラ)・セブ空港を利用できるようになるということが挙げられるでしょう。Zest Airwaysは、ニノイ・アキノ空港・セブ空港に航路を持っているので、その枠がそのまま使えるようになります。したがって、AirAsiaではクラーク空港(マニラ郊外)発着便は10月以降順次なくなるそうです。乗客にとっては、嬉しいニュース!

LCCがLCCを買収する時代。アジアでは、絶好調のAirAsiaが舵をとって統合が進んでいくように見えます。次は韓国のLCCを狙っているとの噂もあります。LCC戦国時代は、すでに次の展開を見せているようです。LCCではありませんが航空業界の話で言うと、フィリピンの超優良ビールメーカーであるサンミゲルグループが、フィリピン航空を買収したのは2012年のこと。日本で言うと、サントリーがJALを買収するようなことですから、なんとも想像しがたいです。(ん?意外に想像できる?)

航空業界内同士でも、業界が違っても、買収は起こります。むしろ業界が異なるほうがシナジーを生みやすい気もします。LCC統合の次の青写真は、企業買収による異業界への進出かもしれません。AirAsiaはすでにTuneというホテルチェーンを経営していますし、LCCと連携すると何か新しい展開が望めそうですね。

LCCに何を掛け算したら、どのように使ったら、もっと世の中が楽しくなるのでしょうか。KitchHikeとの相性もいいことは間違いなし?LCCに乗って、気軽に外国の家庭料理を食べに行く時代が来ると信じています。いずれにしても、もっと日常使いできる移動手段と捉えて、ライフスタイルが拡張する方向性を広がっていってほしいなぁと思う次第。

Zest Airwaysの買収は、LCCの未来と更なる可能性を考えさせてくれるいいきっかけとなりました。今後の展開が楽しみです。

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Profile

山本 雅也(やまもと まさや)

1985年東京生まれ
早稲田大学卒業後、2008年に博報堂DYメディアパートナーズ入社。
雑誌局出版ビジネス部に所属し、出版社の持つあらゆるプロパティを活用した、新規ビジネス開発やクライアントソリューションの提案を行う。
2011年10月より、ソリューションデザイン局ソーシャルメディアマーケティング部 (現iメディア局ソーシャルメディアマーケティング部)に複属し、出版社のプロパ ティとソーシャルメディアを連携させた企画・ビジネススキームを考案。
2012年12月に博報堂DYメディアパートナーズを退社し、KitchHike共同創業者となる。

KitchHikeとは?

世界中の食卓で料理を提供したい人(COOK)とその料理を食べたい人(HIKER)をマッチングさせるオンラインプラットフォーム。
現在、日本/韓国/中国/タイ/マレーシア/フィリピン/インドネシア/トルコ/フランス/インド/アメリカなど、世界11カ国80の食卓が登録されています。(2013年6月20日時点)

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