コラム

津田梅子、下田歌子、安井てつが開いた日本の「女子教育」...明治から現在で、どこまで進んだか

2024年08月06日(火)18時45分

しかし日本の現実は厳しい。女子の大学在学比率は学部の45.7%が大学院になると一気に32.8%に下がる。英高等教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの世界大学ランキング2024によると、女子学生の比率は京都大学で25%。ケンブリッジ大学は48%だ。

研究者に占める女性の割合は英国38.7%、米国34%、フランス28.3%、ドイツ28.1%、韓国21.4%に比べて日本は17.8%と格段に低い。女性研究者数は2013年の13万600人から22年には18万3300人に増えたものの、割合では14.6%から18.3%に改善しただけだ。

英国のアテナスワン憲章

東京大学多様性包摂共創センターの小川真理子特任准教授は論考「学術・科学技術分野における女性研究者支援政策の現状と課題」の中で「上位職階に上がると女性割合が減少すること、また女性が理工系を進路として選びにくい傾向が要因として考えられる」と指摘している。

津田梅子は米ブリンマー大学に2度目の留学をし、生物学を選考したリケジョ(理系女子)の先駆けである。後にノーベル生理学・医学賞を受賞するトーマス・ハント・モーガン教授の下でカエルの卵に関する研究に携わり、共同論文は日本人女性で初めて自然科学分野で英学術雑誌に掲載された。

英国では2005年、高等教育機関における女性のキャリアを促進するアテナスワン憲章が制定された。大沼教授は「英国の大学では憲章を推進することが求められ、評価が低いと政府の研究資金を申請できなくなるなど大きな問題になる。このため改善に努めなくてはならない」と語る。

日本でも高等教育機関におけるジェンダーの壁を打ち崩す不断の努力が求められている。

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米アップル、営業部門で人員削減へ 採用は継続

ビジネス

米国株式市場=上昇、ハイテク株が高い 利下げ観測の

ワールド

中国、25日に「神舟22号」打ち上げ 代替機として

ワールド

和平案に「正しい要素、重要課題はトランプ氏と協議=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story