コラム

女性専用サービスを「女性以外」から守れ! 性別変更の簡易化改革をハリポタ作者が批判(スコットランド)

2023年01月21日(土)16時56分

英国中央政府はスコットランドのジェンダー改革を阻止

一方、英紙タイムズが昨年12月に実施した同様の世論調査では、性別違和の診断書の提出撤廃には60%が反対し、賛成はわずか20%。最低年齢の引き下げは反対66%、賛成21%。獲得した性で暮らす期間の短縮も反対59%、賛成21%。法定要件の違反を犯罪として処罰することについては賛成59%、反対15%だった。

性別違和の診断を撤廃するスコットランド自治政府のジェンダー改革では、法的性別変更の申請は英国の性別認定委員会ではなく、スコットランドの戸籍登録所で行われる。獲得した性で暮らす期間も2年から3カ月(16、17歳の場合は6カ月間)に短縮される。虚偽の申請をした場合は、最高で2年以下の禁錮や罰金が科せられる。

BBCによると、この改革によって直接影響を受ける人はごくわずかで、国家医療サービス(NHS)は、トランスジェンダー人口は全体の0.5%と見積もっている。アイルランドでは15年に同様の改革が行われ、20年までに年平均115件の申請が認められた。誰もが女性として「自認」できるようになれば、女性の権利に影響を与えるとの懸念も指摘される。

英国政府は、スコットランドのジェンダー改革が英国全体の性別認定法を変更し、平等法などイングランド、ウェールズにも影響を及ぼすとしてチャールズ国王の勅許を求める手続きに進むのを阻止する異例の命令を下した。独立強硬派のスタージョン氏にはジェンダー改革とともに、スコットランドと、イングランドの中央政府を分断させる狙いもありそうだ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却を承認 ハイマースなど過去最大

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story