コラム

南ア変異株「オミクロン」欧州でも続々発見 「2回接種でも感染か」と英首相

2021年11月28日(日)13時32分
スキポール空港

オランダのスキポール空港では、南アフリカから到着した乗客から陽性者61人見つかった。オミクロン株かどうか調査中(11月27日) Eva Plevier-REUTERS

<感染率はデルタ株の2倍に達するかもしれないという南ア変異株は、ワクチンが効かないのか、重症化するのか等、まだわからないことも多い。感染拡大を抑えて調べる時間を稼ぐため、イギリスはいち早く監視強化に乗り出した>

[ロンドン発]感染性が高く、ワクチンによる免疫を回避する恐れのある新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロンの感染者が英国内でも相次いで見つかった。ボリス・ジョンソン英首相は27日、緊急の記者会見を行い、店内や公共交通機関でのマスク着用を再び義務付けるなどコロナ対策を強化した。ドイツやイタリアなどでも次々と感染例が報告された。

ジョンソン首相は3回目のブースターワクチンが約1680万人に接種されたことを明らかにする一方で、オミクロン株について「イギリスでも2件の症例(南東部エセックスと中部ノッティンガム)が確認された」と報告。「まだ分からないことがたくさんあるが、この変異株は急速に拡散しており、2回接種した人の間でも感染する可能性がある」と指摘した。

「非常に広範な変異があり、これまでの変異株とは大きく異なる。時間の経過とともにワクチンの免疫効果を部分的に低下させる恐れがある。この変異株について科学者がもっと情報を得る時間を確保するため、予防措置として狙いを絞った適切な対策をとらなければならない。国内での変異株の拡大を遅らせるためだ」として3つの対策を挙げた。

オミクロン株に3つの対策

(1) 入国禁止など水際対策

アフリカ南部の南アフリカやボツワナなど6カ国に加えて、アンゴラ、モザンビークなど4カ国をレッドリスト(イギリス人とアイルランド人以外は入国禁止)に追加。イギリスに入国する人に全員、到着後2日目までにPCR検査を受けさせ、陰性結果が出るまで自己隔離を義務付ける。

(2) PCR検査やマスク着用など国内対策

過去10日間にレッドリスト国に滞在した人を対象にすでに実施しているPCR検査に加え、オミクロン株の陽性反応が出た人に接触したすべての人に10日間の自己隔離を求める。店内や公共交通機関でのマスク着用を義務付ける(飲食店などは例外)。

(3)3回目ワクチンの強化

今後3週間でイングランドだけでブースターワクチンを600万回接種する。2回目からブースター接種までの期間を短くすることを検討する。

ジョンソン首相は報道陣の質問に「今年のクリスマスは昨年よりずっと良いものになると確信している」と答え、状況が良くなる期待を込めて3週間後に対策を見直す方針を明らかにした。昨年は、感染性の強いアルファ(英ケント変異)株の大流行でロンドンやイングランド南東部では普段一緒に暮らしている家族としかクリスマスを過ごせなかった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中マドリード協議2日目へ、TikTok巡り「合意

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story