コラム

日本維新の会、「社会保険料の引き下げ」「医療費削減」主張...背後にある「思惑」とは?

2025年03月12日(水)18時05分
与党と日本維新の会が予算案で合意

shutter_tonko/Shutterstock

<与党との予算案合意において教育の無償化などとともに医療費削減を強く主張した日本維新の会だが、その背景には夏に予定されている参院選で埋没してしまうことへの危機感が>

自民・公明と日本維新の会が教育の無償化などで合意したことから、予算案成立のめどが立った。維新は前原誠司共同代表と石破茂首相の個人的な関係もあり、予算案への協力に前向きと言われていた。

その意味では、今回の合意に大きな驚きはないものの、合意内容には今後の政局を左右しそうな重要項目が含まれている。それは医療費の削減による健康保険料の引き下げである。


維新は教育の無償化を要求すると同時に、現在47兆円まで膨れ上がっている医療費を約4兆円削減し、これを原資に国民から徴収する保険料を年間6万円引き下げたいと主張していた。最終的にはこうした維新の主張を「念頭に置く」という形で合意に至った。

維新が教育の無償化に加え、医療費削減を強く主張した背景には、国民民主党との違いを際立たせたいという政治的狙いがあると思われる。

国民民主は与党との交渉において、基礎控除の大幅な引き下げを要求したものの、大規模減税の財源は最後まで明示しなかった。これが与党との交渉を困難にし、最終的には事実上の決裂状態になってしまったが、国民の支持は高まっている状況だ。

維新はこの状態が続いた場合、夏に予定されている参院選で埋没してしまう可能性が高いと判断。財源を明確に示した上での手取り増加プランを打ち出すことで、国民民主との政策的違いを際立たせたいと考えている。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アリババや百度やBYDは中国軍関連企業、米国防総省

ビジネス

中国、米大豆を少なくとも10カーゴ購入 首脳会談後

ワールド

マクロン仏大統領が来週訪中へ、習主席と会談

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 容疑者は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story