コラム

岸田政権下で手付かずだった「財源」の行方は...石破政権、「経済政策」の注目すべきポイントは?

2024年10月10日(木)17時43分
石破政権の経済政策の注目すべきポイント

TAKASHI AOYAMA-POOLーREUTERS

<経済政策として地方創生や教育無償化などを打ち出している石破首相だが、裏付けとなる財源をどうするのかによって日本経済の未来に大きな影響が及ぶ可能性が>

石破新政権の誕生で、財源に関する議論の活発化が予想される。石破氏は経済政策として地方創生や教育無償化などを打ち出した。また岸田政権の各種政策を引き継ぐ方針も示しており、防衛費の増額や子育て支援策拡充も予定どおり実施するとみられる。

これらの政策を着実に実行するには裏付けとなる財源が必要だが、岸田政権は一部について手当てを行ったものの、残りの財源については手付かずの状況だ。

石破氏は財政健全化を主張しており、国債発行による財源確保は選択しない可能性が高い。また現実問題として、インフレが進むなか、国債を大量発行すれば物価上昇に拍車がかかるのは経済学の理論上、当然の帰結であり、多くの国民が生活苦を感じるなか、物価をさらに押し上げるような選択肢は現実的とは言えない。


これまで財源に関する議論は、立ち上がっては消えるということの繰り返しだったが、そうなっていた最大の理由は、想定される財源として消費税にばかり焦点が当たっていたからである。

消費税は、納税するのは事業者だが、実質的には国民の日常的な支出に課税する税であり、最も徴収しやすい税の1つと言える。所得税や法人税など、他の税が存在しているにもかかわらず、消費税ばかりが増税議論の対象となってきたのは、ひとえに「取りやすい」という部分が大きかったと考えられる。

加えて経済界には法人税の増税を回避したいという強い意向があり、社会保障の財源として消費増税を強く主張してきた経緯もある。

だが、今の日本における政治環境において消費税を増税するのは至難の業であると同時に、賃金が上がらず消費が著しく低迷するなか、消費税を増税すれば景気悪化に拍車をかけるのはほぼ確実である。

石破政権が見据える新たな財源は?

本来、あらゆる種類の税を含めて財源の議論が必要だったにもかかわらず、その議論を避けてきたというのが実際のところだろう。その意味で石破氏が財源に関して言及したことはそれなりに評価して良いと考える。

石破氏は、必要となる財源の具体例として金融所得課税の強化と法人増税に言及している。岸田政権も発足当初は金融所得課税の強化を打ち出したが、株価が下落したことや証券業界からの反発が大きかったことなどから、事実上、撤回に追い込まれた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン、今夏の観光売上高は鈍化見通し 客数は最高

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一

ビジネス

トランプ氏の銅関税、送電網などに使用される半製品も

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 国防相会談も開
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story