コラム

不法移民追放、仮想通貨の規制緩和......トランプ2.0の米経済に忍び寄る「リーマン2.0」

2025年02月04日(火)16時00分

これは生産活動というよりゲームなので、勝った者がGDPのほとんどを取るから、大多数の生活は苦しくなる。政治資金は青天井化し、「資本家」からの大口献金が選挙後の与党の行動を大きく縛るから、企業従業員の福祉は二の次。トランプは不満を抱える層を丸め込んで票を稼ぎ、「君たちの窮状は不法移民や外国の安い製品の流入のせいなのだ」と言い立てて、外国に彼らの怒りを向けようとする。

利上げと利下げの間で揺れる米政府

しかし、こうしたやり方がうまくいくとは思わない。不法移住者の追放、関税引き上げ、エネルギー資源掘削の規制緩和、仮想通貨の規制緩和など、たとえできても1度きり。その後はもう不満層に見せるカードはないのだ。それどころか、逆効果が続々と明らかになってくるだろう。


移住者追放は労働力不足を招く。エネルギー資源開発の規制緩和は原油・ガス価格を下落させて、業界の利益を低下させる。仮想通貨はバブル化して高騰し、その後価格が崩壊すれば、金融危機の引き金になりかねない。トランプ2.0ならぬ、「リーマン2.0」になってしまう。

当面の最大の問題は金利なのだ。市場はインフレの継続を予想しているので、長期金利が上昇中。4~5%と、近年の最高水準にある。まだ景気を冷やしてしまうほどではないが、FRBはこれから利上げと利下げの間で揺れるだろう。大統領、そして周辺もインフレ抑制を第一にするか、利下げ・ドル切り下げによる国内生産の振興と輸入の抑制を狙うかで揺れている。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランは大陸間弾道ミサイル開発を試みている=ルビオ

ワールド

北朝鮮の金総書記、米朝関係は米国の態度次第 韓国と

ワールド

米、イランが核計画の再構築を試みている証拠を確認=

ワールド

原油パイプライン停止はウクライナのせい=ハンガリー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違憲とした「単純な理由」
  • 3
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された「恐怖の瞬間」映像が話題に
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 6
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story