コラム

北朝鮮核開発が火を付けた、日本「核武装」論の現実味

2017年09月21日(木)17時20分

一方、戦後に日本と同じような立場となったドイツは被爆国でないために、核への反発は日本ほどではない。西ドイツの時代から自国領土に何発も持ち込ませた米軍の小型核爆弾(戦術核)が今でも数十発配備されている。昔のソ連軍のような大軍が一気に攻め込んでくれば、その鼻先でこの核爆弾を用いて敵の進軍を止める建前だ。

そして使用する際は米独両国の同意が必要であることからデュアルキー(二重管理)方式と呼ばれる。アメリカの小型核はベルギー、オランダ、イタリアにもある。しかし核兵器を自国領土に置けば、敵による先制攻撃の標的になりやすい。

むしろ日本にとって参考になるのは、イギリスとフランスの核ミサイル搭載原潜だ。双方とも数は少ないが、核抑止力としては十分だ。世界や日本の世論が日本の核武装を許すような状況になれば、アメリカや英仏から原潜を核ミサイル付きで購入するのが手っ取り早い。

経済取引で国境の意味がどんどんなくなる今の時代、核抑止など時代遅れだという人は多い。先進国間ではそのとおり。しかし日本の周辺諸国家は、国家を前面に立てて日本と張り合うナショナリズムに燃えている。その中で、日本は自分の名誉と利益を守る方途を冷静に考える。

それは軍事大国化を全く意味していない。少子高齢化が進む今、国防費をむやみに増やすわけにはいかないのである。

本誌9月20日発売最新号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フランス、予算協議で前進 社会党が首相の譲歩を歓迎

ワールド

ベトナム共産党大会開幕、ラム書記長留任の公算大 2

ビジネス

インド中銀、BRICSのデジタル通貨連携を提案=関

ビジネス

アングル:揺らぐ高市トレード、立公新党で不透明感 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 5
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story