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ウクライナの越境攻撃、3日目に突入 欧州向けガス輸送は正常

2024年08月09日(金)03時49分

ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃は8日、3日目に突入した。安全保障担当高官らと協議するプーチン大統領、7日撮影の提供写真。(2024年 ロイター/Kremlin)

Guy Faulconbridge

[モスクワ 8日 ロイター] - ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃は8日、3日目に突入した。ロシア軍は予備部隊を投入してウクライナ軍との戦闘を続けている。

ウクライナ軍は6日にクルスク州に対する越境攻撃を開始。ロシア国防省によると、戦闘は7日にかけても続き、ウクライナ側の勢力はクルスク州スジャの北西に進撃した。 

スジャはモスクワの南西530キロメートルの地点にあり、ウクライナ経由で欧州に輸出されるロシア産天然ガスの中継拠点。スジャ近辺で激しい戦闘が続いていることで欧州への輸送を巡る懸念が高まっているが、ウクライナ当局は8日、パイプラインは正常に機能していると明らかにした。

<IAEA、クルスク原発の状況監視>

スジャの北東60キロの地点にはクルスク原子力発電所がある。親ロシア派軍事ブロガーのユーリー・ポドリャカ氏によると、クルスク原発まであと約30キロの地点で激しい戦闘が行われている。

ロシア国営通信RIAは、国際原子力機関(IAEA)はクルスク原発周辺の状況を把握しており、状況を監視していると報じた。

ウクライナ軍はクルスク攻勢について現在も沈黙を守っているが、ゼレンスキー大統領は8日、ウクライナ軍の「奇襲」能力と成果を上げる能力を称えた。ただ、クルスクについて直接言及しなかった。

クルスク州のスミルノフ知事代行によると、州内で数千人が避難を余儀なくされている。クルスク州では前日、国境地帯に非常事態が宣言された。

<メドベージェフ氏、ウクライナ全土占領すべきと主張>

ロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は、ウクライナによるクルスクへの攻撃を受け、ロシアは目的をウクライナ全土の占領に拡大すべきと主張。ロシア軍をオデーサ、ハリコフ、ドニプロ、ミコライウ、キーウだけでなく「さらにその先」まで進軍させるべきとし、「ロシアが受け入れ可能と見なし、ロシアの利益になると判断した場合にのみに停止する」と述べた。

ロシア軍のゲラシモフ参謀総長はプーチン大統領に対し、ロシア軍がウクライナ兵士約1000人による攻撃を阻止したと報告。ロシア国防省は8日、軍と連邦保安局(FSB)がウクライナの進軍を阻止し、クルスク州でウクライナ軍と戦っていると表明。同省によると、ウクライナは戦車8両を含む82両の装甲車両を失った。

<米に事前通知なし>

米ホワイトハウスは、この攻撃について事前に知らされていなかった。匿名の米政府関係者は、ウクライナに軍事行動の詳細な目的を尋ねたと明らかにした。

この関係者によると、ウクライナ軍は国境地帯の北側で軍事行動を行っており、防衛目的で米国が提供する武器の使用が可能だと伝えているという。

ロイター
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