ニュース速報
ワールド

アングル:中国、ビザなし渡航で観光客増加 コロナ前復帰には数々の壁

2024年07月20日(土)07時54分

中国は現在、景気と個人消費の回復を目指して外国人観光客の誘致に力を入れており、多くの旅行者が中国に押し寄せている。写真は北京で2017年1月撮影(2024年 ロイター/Jason Lee)

Sophie Yu Casey Hall

[北京 17日 ロイター] - イタリア人のギレルメ・カルバーリョさんは今月、初めて中国に旅行した。新型コロナウイルスのパンデミック後、ビザ(査証)なし渡航が可能になったのが一番の理由だ。

以前は全ての外国人観光客にビザ申請が義務付けられていたが、現在は十数カ国からの旅行者は、ビザなしで入国して最長15日間滞在することができる。

上海を訪れたカルバーリョさんは「こんなに安全だとは思わなかった」と語る。「みんなとても親切だ」

中国は現在、景気と個人消費の回復を目指して外国人観光客の誘致に力を入れており、多くの旅行者が中国に押し寄せている。

中国最大のオンライン旅行会社トリップ・ドット・コムのデータによると、6月24日現在、フランス、ドイツ、イタリア、マレーシア、タイなどビザが免除された複数の国々からの旅行予約は前年比で150%も急増。7月と8月の予約も増える見通しだ。

中国は昨年12月から、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランドを含む複数国についてビザなし渡航を可能にした。

<本格回復の壁>

中国は2020年から23年初めまで、パンデミックを封じ込めるために国境を閉鎖していた。

最近ではビザ免除の効果で観光客が急増しているが、パンデミック以前に比べれば依然としてはるかに少ない。

公式データによると、2019年に中国を訪れた外国人は計4910万人で、3分の1以上が観光やレジャー目的だった。同年の外国人観光客による収入は1313億ドルに達した。

これに対し、今年上半期の外国からの訪問者数は1460万人にとどまっている。外国人観光客による収入のデータは20年以降、発表されていない。

旅行代理店は、来年には世界的な旅行需要と旅客便の運航スケジュールがパンデミック前の水準まで回復し、観光客がさらに増えると期待を寄せている。

ただ専門家は、中国が外国人観光客を増やすにはビザ免除以外にも対策が必要だと指摘する。

地政学的な緊張、反対意見を許さない政府、そして一部の西側メディアにおける中国の好戦的な描写が、一部の観光客を遠ざけている。先月、外国人を狙った刃物による襲撃事件が2件発生したことも、治安上の懸念を呼び起こした。

中国はまた、円安のおかげで観光ブームに沸いている日本と注目度を競わなければならない。

外国人にとってもうひとつのハードルは、中国に行き渡るデジタルインフラだ。交通機関のチケットからレストランの予約、観光地の入場券に至るまで、全ての支払いは「微信(ウィーチャット)」や「アリペイ(支付宝)」など中国の決済アプリにひも付けされたQRコードを通じて行われるため、外国の銀行カードを持っている人々にとっては日々の手続きが難しい。

中国は、外国の銀行カードと微信および支付宝とのリンクを許可してはいるが、依然としてシステムと言語の壁が立ちはだかる。

スコットランドに住み、今月アイルランド人の夫と中国の故郷を訪れる予定の学者、リャン・ホンリンさんは「中国の決済ツールを持たず、言葉も話せない外国人が、どうやってこの全てに対処できるのか想像もつかない」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

情報BOX:ベネズエラの石油産業、膨大な埋蔵量 脆

ビジネス

現代・起亜、26年販売目標は3.2%増 25年販売

ワールド

中国外相「世界の裁判官」認めず、米国のマドゥロ氏拘

ビジネス

鴻海、第4四半期売上高は過去最高 AI需要がけん引
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── 韓国拉致被害者家族が見る日韓の絶望的な差
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 6
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中