ニュース速報
ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米など猛反発

2024年05月21日(火)02時57分

国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相のほか、イスラム組織ハマス幹部3人の逮捕状を請求したと発表した。2021年3月撮影(2024年 ロイター/Piroschka van de Wouw)

[ハーグ/エルサレム/ワシントン/ロンドン 20日 ロイター] - 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相のほか、イスラム組織ハマス幹部3人の逮捕状を請求したと発表した。

これに対し、ネタニヤフ首相本人は猛反発。米国や英国からも批判的な声が上がっている。

逮捕状を発行するに十分な証拠があるかどうかは、予審裁判部が今後判断する。

カーン氏は声明で、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で「刑事責任を負う」と信じるに足る十分な根拠が得られたと指摘。「イスラエルは他の全ての国と同様に国民を守るために行動する権利があるが、こうした権利は国際人道法を順守する義務を免除するものではない」とし、イスラエルが行ったとされる人道に対する罪は「国家政策に基づくパレスチナ民間人に対する広範かつ組織的な攻撃」の一部との見解を示した。

その上で、イスラエルが食料、水、医薬品、エネルギー源などの「人間の生存に不可欠な物資」を民間人から組織的に奪っていたことを示す証拠が得られているとし、ネタニヤフ首相とガラント国防相は故意に多大な苦しみを引き起こし、戦争犯罪として殺人を犯したことに責任を負っているとした。 

ICCはハマス最高指導者のハニヤ政治局長ら3人の逮捕状も請求。ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏は「被害者と加害者を同一視するものだ」と非難し、逮捕状請求の取り消しを要求した。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ICC検察官が、民主的なイスラエルと大量殺りくを行うハマスとを比較したことに嫌悪感を抱く。イスラエル国民を虐殺し、レイプし、誘拐したハマスと、正義の戦争を戦っているイスラエル軍兵士を比較することなどできるだろうか」と激しく反発した。

その上で、逮捕状請求は不合理であり、イスラエル全体を標的にしたもので「新たな反ユダヤ主義」の姿だと批判した。

イスラエルのヘルツォグ大統領も、逮捕状請求は世界中の「テロリスト」の増長につながると非難。「テロリストと民主的に選ばれたイスラエル政府との間に類似性を引き出そうとするいかなる試み」も断じて容認できないと述べた。 

米英もICCの行動を強く批判している。

バイデン米大統領は20日、逮捕状請求は「言語道断」だと非難した上で「検察官が何を言おうと、イスラエルとハマスの間には同等性など全くないということをはっきりさせておきたい。米国はイスラエルの安全保障について常にイスラエルを支持する」と述べた。

ブリンケン国務長官も同様の見解を示した上で、ICCの管轄権と逮捕状請求に疑問を投げかけた。また、人質奪還と停戦合意に向けた交渉が危うくなる可能性があるとした。

英国のスナク首相の報道官も、ICC検察官の決定は「戦闘の停止、人質の救出、人道援助の実施に寄与しない」と述べた。また、ICCには逮捕状を請求する権限がないとも語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中、船舶入港料1年停止へ 首脳会談で合意

ワールド

コインベース、第3四半期は大幅増益 取引量増加で

ワールド

アップルCEO、年末商戦iPhone販売好調予想 

ビジネス

米国株式市場=下落、AI支出増でメタ・マイクロソフ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中