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陸上型イージスが優勢、日本のミサイル防衛強化策=関係者

2017年05月13日(土)16時21分

 5月13日、弾道ミサイル防衛強化の一環として整備を検討している新型迎撃ミサイルシステムについて、日本政府が陸上配備型イージス(イージス・アショア)の導入に傾いていることがわかった。写真は、ルーマニアのデベセル空軍基地に配備された「イージス・アショア」のデッキハウス。2016年5月撮影(2017年 ロイター/Inquam Photos/Adel Al-Haddad)

[東京 13日 ロイター] - 弾道ミサイル防衛強化の一環として整備を検討している新型迎撃ミサイルシステムについて、日本政府が陸上配備型イージス(イージス・アショア)の導入に傾いていることがわかった。THAAD(サード)より迎撃範囲が広く、少ない配備数で済むほか、洋上で警戒任務を続けるイージス艦の負担を減らせるとみている。

政府は米軍の試験施設があるハワイへ5月中にも視察団を派遣するなどし、今夏までに決定する。複数の政府・与党関係者が明らかにした。

イージス・アショアは、イージス艦に搭載している迎撃ミサイルシステムを陸上に配備したもの。高度1000キロ以上に達する日米共同開発の迎撃ミサイルSM3ブロック2Aを発射可能で、2─3基で日本全土を防衛できるとされる。

もう1つの選択肢であるサードは、宇宙空間で迎撃するSM3と、地上近くで迎撃するパトリオット(PAC3)の間の高度で弾道ミサイルを撃ち落とす。SM3とPAC3をすでに保有する日本にとっては、迎撃態勢が3層になるメリットがある。在韓米軍はさきごろサードを配備した。

政府は北朝鮮の核・弾道ミサイルの開発進展を受け、どちらかの迎撃ミサイルの導入を検討してきた。複数の関係者によると、イージス・アショアを推す声が多数を占めるという。イージス・アショアは1基700ー800億円と、1000億円以上のサードより調達価格が優位なうえ、配備数が少なくて済むため場所の確保も比較的容易だと、複数の政府・与党関係者は指摘する。

さらにイージス・アショアであれば、24時間体制の弾道ミサイル警戒任務を続けるイージス艦の負担が減り、訓練や他の任務に振り向けることが可能になると、複数の関係者はみている。

政府は調達先である米政府と調整をしながら、今夏までに結論を出す見通し。今月中にも、ハワイにあるイージス・アショアの試験施設の視察を検討している。

3月末に弾道ミサイル防衛の強化策を政府に提言した自民党の中には、来年度予算を待たず、政府予備費で早急に導入を進めるべきとの声もある。

イージス・アショアは、北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアで運用が始まっている。

(久保信博)

ロイター
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