見通し期間後半に少なくとも1%まで利上げ必要=田村日銀審議委員
9月12日、日銀の田村直樹審議委員は岡山県金融経済懇談会であいさつし、経済・物価に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利について「最低でも1%程度だろうとみている」と明言した。写真は昨年1月、都内の日銀本店で撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)
Takahiko Wada
[岡山市 12日 ロイター] - 日銀の田村直樹審議委員は12日、岡山県金融経済懇談会であいさつし、経済・物価に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利について「最低でも1%程度だろうとみている」と明言した。2026年度までとなっている展望リポート(経済・物価情勢の展望)の見通し期間の後半には「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で必要だ」と語った。
中立金利の具体的な水準に言及するのは日銀の政策委員で初めて。
田村委員は市場が予想する短期金利の引き上げペースは緩やかで、「このペースの短期金利の引き上げでは、見通し期間の後半においても短期金利は中立金利に届かない」と指摘。物価の上振れリスクをさらに高めたり、後になって急ピッチの利上げを余儀なくされる可能性も否定できないと警戒感を示した。
その一方で、日本は長らくほとんど金利がない状況が続いてきたため、経済主体が金利にどのように反応するか「予断を持たずに注意深く見ていく必要がある」と述べた。26年度までの見通し期間の後半の1%の水準を念頭に置きながらも「物価目標の実現する確度の高まりに応じて段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要がある」と話した。
田村委員は、物価目標の実現に向けて「オントラックで進んでおり、目標が実現する確度は引き続き高まってきている」と述べた。半面で、物価の先行きについては「上振れリスクが膨らんできているのではないかと懸念している」と語り、人手不足、人件費の価格転嫁が想定以上に進む可能性、輸入物価が再度上昇基調にあることをその理由に挙げた。
8月入り後の日本株大幅下落・円高を巡り、市場では日銀の利上げも誘因の1つだったとの指摘が目立つ。田村委員は、4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば「金融緩和度合いを調整していくことになる」という日銀の考え方は一貫していたと説明した。
その上で、日銀の方針が過不足なく市場に伝わっていたのか、市場の受け止めに対してより適切に対応する術はなかったのか「改めて振り返り、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要だ」と述べた。金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響について「引き続き、丁寧に目を配っていきたい」とも話した。