ニュース速報
ビジネス

見通し期間後半に少なくとも1%まで利上げ必要=田村日銀審議委員

2024年09月12日(木)11時32分

 9月12日、日銀の田村直樹審議委員は岡山県金融経済懇談会であいさつし、経済・物価に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利について「最低でも1%程度だろうとみている」と明言した。写真は昨年1月、都内の日銀本店で撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[岡山市 12日 ロイター] - 日銀の田村直樹審議委員は12日、岡山県金融経済懇談会であいさつし、経済・物価に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利について「最低でも1%程度だろうとみている」と明言した。2026年度までとなっている展望リポート(経済・物価情勢の展望)の見通し期間の後半には「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で必要だ」と語った。

中立金利の具体的な水準に言及するのは日銀の政策委員で初めて。

田村委員は市場が予想する短期金利の引き上げペースは緩やかで、「このペースの短期金利の引き上げでは、見通し期間の後半においても短期金利は中立金利に届かない」と指摘。物価の上振れリスクをさらに高めたり、後になって急ピッチの利上げを余儀なくされる可能性も否定できないと警戒感を示した。

その一方で、日本は長らくほとんど金利がない状況が続いてきたため、経済主体が金利にどのように反応するか「予断を持たずに注意深く見ていく必要がある」と述べた。26年度までの見通し期間の後半の1%の水準を念頭に置きながらも「物価目標の実現する確度の高まりに応じて段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要がある」と話した。

田村委員は、物価目標の実現に向けて「オントラックで進んでおり、目標が実現する確度は引き続き高まってきている」と述べた。半面で、物価の先行きについては「上振れリスクが膨らんできているのではないかと懸念している」と語り、人手不足、人件費の価格転嫁が想定以上に進む可能性、輸入物価が再度上昇基調にあることをその理由に挙げた。

8月入り後の日本株大幅下落・円高を巡り、市場では日銀の利上げも誘因の1つだったとの指摘が目立つ。田村委員は、4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば「金融緩和度合いを調整していくことになる」という日銀の考え方は一貫していたと説明した。

その上で、日銀の方針が過不足なく市場に伝わっていたのか、市場の受け止めに対してより適切に対応する術はなかったのか「改めて振り返り、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要だ」と述べた。金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響について「引き続き、丁寧に目を配っていきたい」とも話した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中