ニュース速報
ビジネス

景気懸念再燃、ボラティリティー上昇も=今週の米株式市場

2024年09月08日(日)13時35分

 米株式市場では予想を下回る雇用統計を受けて景気の先行き不透明感が強まっている。写真はニューヨーク証券取引所前で2021年4月に撮影(2024年 ロイター/Carlo Allegri)

Lewis Krauskopf David Randall

[ニューヨーク 6日 ロイター] - 米株式市場では予想を下回る雇用統計を受けて景気の先行き不透明感が強まっている。市場は金融政策や大統領選を巡る思惑、高値警戒感を背景にすでに不安定な展開となっていたが、今後一段とボラティリティーが高まる可能性がある。

6日のS&P総合500種指数は1.7%急落。同日発表の雇用統計が予想を下回り、ソフトランディング(軟着陸)に向けた道筋が狭まるとの見方が浮上した。

今月17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが予想されているが、これまでの高金利が経済を圧迫し始めているとの懸念が再燃している。

エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジスト、アンジェロ・クールカファス氏は「今回の雇用統計ではソフトランディングの軌道が維持されていることが明らかになったが、一段の下振れリスクがあり、市場は神経質になるだろう」とし「ボラティリティが上昇するという予想には現実味がある」と述べた。

6日の株式市場では半導体大手のエヌビディア4%以上下落。約1カ月ぶりの安値近辺で取引され、他の大手ハイテク株にも売りが出た。

「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は約1カ月ぶりの高水準に上昇した。

トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者(CIO)は「FRBの対応が迅速さや強力さに欠け、不吉な事態を防げないのではないかとの懸念が出ている」と述べた。

先物市場は今月の25ベーシスポイント(bp)利下げの確率を約70%、50bp利下げの確率を約30%と予想しているが、不透明感は強い。

LPLファイナンシャルのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「労働市場が新型コロナウイルス流行前の水準に向かって正常化しているのか、経済が危険なほど勢いを失っているか。市場もFRB同様、この問題に取り組まざるを得ない」と述べた。

シティのアナリストは今回の雇用統計で今月の50bp利下げが正当化されるとし「労働市場は景気後退(リセッション)に先立つ古典的なパターンで冷え込んでいる」との見方を示した。

9日から始まる週に発表となるインフレ指標で経済動向が一段と明らかになり、FRBの利下げ幅を巡る市場予想が収れんすることも考えられる。

バリュエーションに対する懸念も再燃している。S&P総合500種指数は今年13%以上上昇。LSEGデータストリームによると、12カ月先予想PER(株価収益率)は5日時点で約21倍と、長期平均の15.7倍を大幅に上回っている。最近のハイテク株下落にもかかわらず、S&P情報技術セクターの予想PERは28倍超、長期平均は21.2倍だ。

イントレピッド・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マーク・トラビス氏は「われわれは比較的短い期間で大きな進展を遂げてきた。一部の企業の間ではAI(人工知能)が本当にコストに見合うのか計算する動きが出始めている。これは大手ハイテク株も重しになるだろう」と述べた。

終盤戦に入りつつある米大統領選への注目も集まっている。10日には民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領がテレビ討論会で初対決する。

9月は歴史的にみて株価のパフォーマンスが悪い。CFRAの1945年以降のデータによると、S&P総合500種指数は9月に平均0.8%近く下落し、月間ベースで最大の下げを記録。今年9月はすでに4%下落している。

NFJインベストメント・グループのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、バーンズ・マッキニー氏は「投資家は『ソフトランディングを期待しよう』と言っている。まだその可能性はかなり高いと思えるが、雇用指標が悪化するたびにそれが基本シナリオとなる可能性が低下していく」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

シリア外相・国防相がプーチン氏と会談、国防や経済協

ビジネス

円安進行、何人かの委員が「物価上振れにつながりやす

ワールド

ロシア・ガスプロム、26年の中核利益は7%増の38

ワールド

英、農業相続税の非課税枠引き上げ 業界反発受け修正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中