ニュース速報
ビジネス

焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 環境改善や規制対応一巡で

2024年04月25日(木)16時08分

 国内生命保険各社は2024年度の資産運用で、日本国債への投資では利回り水準を冷静に見極めながら臨むスタンスを打ち出した。写真は2017年6月撮影(2024年 ロイター/Thomas White)

Tomo Uetake

[東京 25日 ロイター] - 国内生命保険各社は2024年度の資産運用で、日本国債への投資では利回り水準を冷静に見極めながら臨むスタンスを打ち出した。日銀が先月にマイナス金利政策を解除し、市場では年内の追加利上げも意識される中、運用環境は改善してきている。一方、新たな資本規制に対応するための買い需要は一巡し、「純粋な投資目線」で妙味を判断するとの声が聞かれた。

<「利回り1.9%台の30年国債」には一定の妙味>

生命保険契約という超長期の円建て負債を抱える生保各社にとっては、健全性の観点から超長期国債が資産運用の柱となる。各社が主な投資対象に挙げる30年債の利回りは足もとで1.9%台半ばとなっており、大手生保の負債コストの平均利回りの1.8%程度を上回ってきた。

もっとも、現水準での超長期国債への投資意欲には強弱がある。最大手の日本生命は「魅力が出てきた水準と言える。今は着実に買っている」と話す。

一方、住友生命は「十分魅力的な水準」との見方については一致するものの、まだ金利上昇余地があるとの見方から「積極的・集中的には投資していない」とやや抑制的だ。

第一生命や富国生命も「利回りが2%を超えてくれば従来以上に妙味が出てくる」(第一生命の堀川耕平運用企画部長)との目線を示し、一段の金利上昇を待つ構えを見せた。

<規制対策が一巡、国債購入への「追い風」止む>

今年度の運用計画で特徴的なのが、国債の購入ペースの変化だ。昨年度までは年間購入予定額を均等に割った「平準ペースでの買い」を挙げる生保が多かったが、24年度はより投資妙味を重視し、メリハリをつけた買い方をするという会社が多い。

背景には、25年度に導入される新たな資本規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)への対応の動きが一巡してきたことがある。

日本生命の都築彰執行役員財務企画部長は、過去3─4年は負債と資産のデュレーション・ギャップを減らすというリスク削減目的で、金利が低くても超長期国債をしっかり買ってきたと説明し、「それが現在は金利リスクがだいぶ縮小し、純粋な投資対象として利回りを見て判断できるようになった」と明かす。

明治安田生命、住友生命、かんぽ生命もまた、新資本規制への対応にめどが立ったことを理由に、平準ペースの買いから「純粋な投資目線」での買いにシフトする方針を掲げている。

<年内1回の追加利上げ予想、30年金利は2%超で上昇ペース鈍化>

日銀の金融政策については、年内1回の追加利上げがあるとの想定に基づき、30年金利にも上昇圧力がかかるとの予想が多い。明治安田生命では「追加利上げに伴い、2%は超えて2.1─2.2%まで上昇するだろう」(北村乾一郎運用企画部長)との見通しを持っている。

一方、30年債利回りが2%を超えてくれば、投資妙味を理由とした生保勢の買いも増えるとみられるため、金利上昇ペースは鈍化しそうだ。

住友生命の増田光男運用企画部長は「(生保の買いが加速すれば)金利の上昇を一定程度抑える効果はあるだろうが、機関投資家としては自ら金利を押し下げるような買い方をするとは思えず、市場を壊さない程度の買いになるのではないか」との見方を示した。

日本生命の都築氏は「金利が上がってきたことは生保の運用にとっては非常にプラス」と評価。同社のポートフォリオは非常に大きく、すぐに収益が上がるというわけではないとしながら、「今年度は円債を増やす局面からポートフォリオの耐性を高めるフェーズへのシフトを図っていく中、投資しやすい環境になった」と話している。

※「国内主要生保の2024年度資産運用計画・市場見通し」一覧はこちらでご覧いただけます[L3N3GP0K1]。

(植竹知子 取材協力:金融マーケットチーム、編集:平田紀之)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下

ワールド

米大統領とヨルダン国王が電話会談、ガザ停戦と人質解

ワールド

ウクライナ軍、ロシア占領下クリミアの航空基地にミサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 7
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 8
    もろ直撃...巨大クジラがボートに激突し、転覆させる…
  • 9
    日本人は「アップデート」されたのか?...ジョージア…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 6
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中